それでも、時は止まらずいつもと変わらぬ日々は続く。
しかし、この日は同じ文房具担当の主婦さんである石橋さんが開店から13時まで出勤してくれていた為、その間に売場で作業することが出来た。
とりあえず、定番商品ではない売れ残った文房具系のグッズを売価変更し、シール貼りを済ませられただけでも良かった。
その後、石橋さんが退勤してから、いつものように村川さんが「西森さん、一等くじの対応お願いします。」と呼びに来た。
「はい、分かりました。」
そう言ってレジカウンターへ行くと、わたしと同年代くらいでガタイの良く建築関係の仕事をされているような作業着を着た男性が待っていた。
「お待たせ致しました!」
「あ、僕アカの一等くじお願い出来る?」
「かしこまりました!"僕と英雄アカデミア"ですね!」
わたしはくじが入っている箱を棚から持ってくると、「何回お引きになりますか?」と尋ねた。
「一回で!」
「一回ですね。では、お会計780円でございます。」
わたしはレジ打ちをしながらそう言い、お客様の男性は作業着のズボンの後ろポケットから財布を取り出すと、「俺、B賞狙いなんすよね〜。」と言った。
「あ、たっちゃん狙いですか?」
「そう!爆豪辰己!」
「たっちゃんかっこいいですよね!でも、わたしは相島先生推しなんです。」
「おぉ〜!お姉さんなかなか見る目あるね!相島先生もかっこいいよなぁ!」
お客様とそんな会話をしながら会計を済ませ、いざくじ引きへ。
すると、お客様が「お姉さん引いてよ!」と言ってきた。
「え!わたしですか?!わたしくじ運ないですよ?!」
「大丈夫大丈夫!何当たっても文句言わないから!」
「え、じゃあ、、、」
わたしはくじの箱の中身を見つめると、変な緊張の中、一枚のくじを引いた。
「じゃあ、これで!」
そう言って、お客様にくじを渡す。
「じゃあ、開くよ?」
お客様の手元を見つめながら、わたしは願った。
どうか、B賞でありますように、、、
すると、ペラッとめくったくじの中から"B賞"の文字が現れたのだ。
「やったぁ!B賞だ!お姉さん、運持ってるじゃん!ありがとう!」
そう言って喜んでくれるお客様と共にわたしも喜び、B賞のフィギュアを一等くじ用の袋に入れると、お客様に手渡した。
「お姉さんありがとね!」
「ありがとうございます、またお越しくださいませ!」
お客様に喜んでもらえた。
良かったぁ、、、
そう思っていると、本売場の向こう側で望田さんと村川さんがこちらを見ながら、コソコソと話してるのが見えた。
また何か言われてるんだなぁ。
そう思いつつも、わたしはレジを離れ、自分の仕事へと戻った。



