最期の晩餐


「俺、子どもたちには『困っている人には進んで手を差し伸べましょう』って教えてきたのになぁ……」

 折角この話は終わりにしようと思っていたのに、隼人が喋り続けるから、

「夢と希望と理想論は、所詮綺麗事だからね」

 一瞬で口の前に作った×を振り解く。

「そんなこと、生徒たちに言えないよ」

「言わなくっていいよ。大人になったら夢ばかり見ていられなくなるんだから、子どものうちにいっぱい夢を見せて希望を語らせればいいよ。でもさ、『誰彼構わず助けろ』っていうのは、やっぱ違うと思う。だってさ、隼人の親友が借金で首が回らなくなって『連帯保証人になってくれ』って頼んで来たら、なる?」

「それは……無理」

「だよね。自分に借金が降りかかってくるかもしれないし、それで家族に迷惑が掛かるのも嫌だもんね。だからさ『目には入った困っている人を片っ端から助けようとしなくていい。自分が助けられる範囲でいい。自分に出来ないことは、他の誰かがやればいい。ただ、自分が助られる人を見て見ぬフリはするな』でいいんじゃん? あと、スケベ心を出すな」

「……まぁ、そうだね。てか、スケベスケベ言い過ぎ」

 理解は出来ていると思うが、生徒たちの前では夢や希望だけを話していたいだろう隼人は、何か腑に落ちない表情をしながら頷いた。