最期の晩餐

「……『やり直せないかな?』って言われた。でもちゃんと断った。俺は奈々未と別れる気ないから。そしたら『付き合ってくれなくていいから、会いたい。話を聞いてくれるだけでいい』って」

 言いにくそうに話す隼人は、【言いにくい】を装っているんだなと思った。眉間には皺を寄せているのに、口元が少し緩んだのが見えたから。

「亜子さんに『会いたい』って言われて嬉しかったんだね。そうだよね。昔の彼女が今も自分に気があるって分かったら、嬉しいよね」

「別にそんなんじゃ……」

 異を唱えようとした隼人が、私の目を見た途端に言葉を消し、

「……どうせお見通しだよね。うん、嬉しかった」

 言い訳するのを諦めた。私の目というのは、そんなにまでも圧があるのだろうか。

「……スケベだねぇ」

「……そうだね。その通りだわ」

 観念した隼人は、嫌がっていた【スケベ】も受け入れる。

「隼人はどうしたい? 私とは別れたくない? 亜子さんとも会い続けたい?」

 反論をしなくなった隼人に、最後の質問を投げかける。

「奈々未と別れたくない。だから亜子とはもう会わない。……だけど亜子、周りに話を聞いてくれる人いるのかな」

 私に別れたくないと縋りながらも元カノの心配をする隼人を、正直者と呼ぶのか。将又、無神経と呼ぶのか。