最期の晩餐

「私はいらない。水分取るとビッチビチに下しちゃって話し合いどころじゃなくなるから」

「でも、水分たくさん取った方がいいんじゃないの?」

「まぁ、そうだけど。クリニックで点滴三本打ってから帰ってきたから、まだ大丈夫。ウチラのこの状態を長引かせる方が良くない」

「そんなに⁉ ……じゃあ、ちょっと待ってて」

 点滴の数を聞いた隼人が「重症じゃん」と驚きながら、マグカップにインスタントコーヒーの粉を入れた。

『ベッドで寝てて』と言われたが、うっかり寝落ちしたら最悪だと思い、ソファでお湯が沸くのを待つ。しばらくすると、隼人がマグカップを二つ持って戻ってきた。

「いらないって言ったのに」

「話してる最中に飲みたくなるかもしれないでしょ? 飲みたくなかったら飲まなくていいよ。俺だけ飲んで女性に飲み物なしっていうのは、何かちょっとねぇ……。野郎だったら別にどうでもいいけど。あ、奈々未はココアにしておいたよ」

 私の前にココアを置き、自分には『どんだけ粉入れたんだよ』くらい真っ黒なブラックコーヒーを用意して、私の隣に座る隼人。

「今の言い方はLGBTQとかの団体が黙っておかない案件だよ」

「生きづらい世の中になったねぇ。ただのレディーファースト精神なだけなのに。だったらレディーファーストって言葉自体をこの世から抹消して欲しいわ」

 渋い顔をした隼人が、コーヒーを一口啜り、更に険しい表情をした。やっぱりコーヒーが濃すぎたらしい。