最期の晩餐

 良く知りもしない隼人の元カノと自分を比較して、自分のダメなところを再確認しつつも、自分の悪いところも容認してくれる浮気をしない彼氏じゃなきゃ嫌だという我儘な私は『私、本当に幸せになれるの? 楠木さーん‼』と、最早声にも出さずに念力で天界との疎通を試みるが、当然返事はない。返事がないからまた泣いてしまう。

「手紙、そんなに辛いことが書いてあったの? それともお腹痛い?」

 隼人が、泣き続ける私の顔を覗き込んだ。

「……読んでないの?」

「勝手に他人の手紙を読むわけないじゃん。犯罪だよ」

 浮気はするが、こういうところは律儀な隼人。

「美知さんは読んだってよ」

「今の、美知には言わないで」

「黙っていられたらね。私、お喋りだから」

「知ってる。怒られたら謝るから、黙ってて欲しいけど言ってもいいよ」

 私の性格を良く知っている隼人が「ふふ」と小さな息を吐いて笑った。

「読んでみる?」

「いいの?」

「うん」

 隼人に楠木さんの手紙を渡すと、隼人がそっとそれを開き、黒目で文字を追い出した。

「……この手紙の患者さんって、奈々未がハンバーグの味を探してた、その人?」

「うん。隼人がハンバーグの味を探し当ててくれたんだもんね。ありがとう」

 隼人が見つけてくれたハンバーグの味なのに、今までちゃんとお礼を言ってなかった。