最期の晩餐

「イヤ、違う」

「え、違うの⁉」

「うん。違う」

 そりゃあ、隼人のしでかしたことはショックではあったけど、楠木さんが亡くなってしまった悲しみに比べたら米粒みたいなものだ。

「何でだよー。何でノーダメージなんだよー。俺なんか授業してても給食食っててもずっと気にしてたのにー‼」

 あたかも、私の胃腸炎の原因が自分だったら良かったとでも言いたげな隼人の口ぶりに呆気に取られた。

「大人なんだから、しっかり気持ち切り替えて授業しなさいよ。生徒たちに失礼でしょうが」

 と、自分だって楠木さんのことをずっと引きずって仕事をしていたくせに、偉そうに言ってみる。

「切り替えなくても仕事出来るもん。大人だから‼」

 腰に手を当て、フンッと鼻から息を吐く子どもっぽい隼人。

 こういうところが生徒から好かれるんだろうなと思う。

「そんなことより、美知さんから預かった手紙ちょうだい」

 右手を突き出し『早くくれ』と手紙をせびる。

 隼人と話をすることよりも、楠木さんからの手紙を読むことの方が遥かに大事だ。

「あ、うん」

 ようやく背中からリュックを外した隼人が、中からバインダーを取出し、そこに挟んであった楠木さんの手紙を私の手の上に置いた。

 大事な大事な手紙だから、折り目や皺が付かないように大切に扱ってくれた隼人に、戦闘態勢だった心が少し治まった。

 少しドキドキしながら、楠木さんの手紙をゆっくり開く。