天才悪女は嘘を見破る2〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜ユアン再会編

 ロベリアを思い浮かべながら、アマリリスは半分だけ真実を混ぜ込んで事実のように話し、最後は金を渡すと伝える。

 今、カーヴェル公爵が欲しがるものを次々と提示した。

 生唾を飲み込んだカーヴェル公爵の喉仏が大きく上下する。

 気持ちが揺れていることを感じ取ったアマリリスは、もう一押しした。

「薬を譲ってくれるなら、其方の言い値で代金を支払おう。私はどんな手段を使おうとも、確実にあの女を始末したいのだ」

 カーヴェル公爵の瞼がピクピクと痙攣している。

 このマイクロサインは意識してコントロールできないものなので、彼が葛藤していることは間違いない。

(……これ以上追い詰めるより、ほんの少し引いた方がよさそうね)

 アマリリスは深くため息をついて、あきらめの表情を浮かべて言葉を続ける。

「……やはり無理か。ここで話したことは内密にしてくれ。今日はこれで失礼する」

 悲しげに眉尻を下げて目を伏せ、ゆっくりとした動きでソファーから立ち上がった。

 顔を覆うようにストールを巻きつけて、もう一度カーヴェル公爵に視線を向ける。

「アマーリエ王女」
「なんだ? 慰めの言葉ならいらんぞ」
「絶対に私の名前を出さないと誓っていただけますか」
「もちろんだ。私はこのことを決して口外しない」
「わかりました。薬をお譲りしましょう。こちらへどうぞ」

 そう言って、カーヴェル公爵は執務室へふたりを案内した。