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 アマリリスはようやく目的の人物、カーヴェル公爵と対面した。

 アンネは事前の打ち合わせ通り、捕まった素振りは見せずカーヴェル公爵へ挨拶をする。

「カーヴェル公爵、ご無沙汰しておりますわ。本日はあたしの提案を受け入れてくださって、ありがとうございます」
「……ふんっ。商人如きが生意気だが、例の物についてと言われたら仕方あるまい」

 カーヴェル公爵はチラリとアマリリスに視線を向けるが、興味なさげに対面のソファーへ腰を下ろした。

「では早速、商談を始めさせていただきます。最初に、この場を設けてほしいと強く希望されたのはこちらのお方です」
「プラジャーク王国の第三王女、アマーリエと申します」

 本当は大商人の娘と自己紹介するはずだったが、アマリリスは急遽王族を名乗る。

 これは賭けだった。

 王族ともなれば名も知られ、顔も知られている可能性が高い。

 だが、プラジャーク王国はフレデルト王国から遠く離れた地にあり、影響力がほとんどない小国だ。

(だからこそ、計画性のないカーヴェル公爵はきっとそんな小国の情報なんて調べていないはず……)

 もし万が一情報を知っていたとしたら、本当はその国の貴族だと打ち明ければいい。

 王女の命を受けたと言って、次の段階へ進めるだけだ。

「……王女だと? 遠い異国の小国など知らんが、王族だという証拠はあるのか?」