まだカーヴェル公爵が捕まっていないので心残りはあるが、それは騎士団の仕事だ。

 テオドールとこうして会えただけでも奇跡的なことだと思っている。

 兄たちの入国拒否も取り消されたから、ユアンとも近々会えるだろう。どんなに遅くても結婚式には参加してくれるに違いないと、アマリリスは考えていた。

「そうかな。僕はもっとアマリリスを笑顔にしたいよ」

 ルシアンはそう言いながら、アマリリスを背後から抱きしめる。突然の抱擁でアマリリスの心臓は跳ね上がった。

 それと同時にブレスレットの宝石が先ほどよりも幾分濃いピンクに光る。

「どうやら喜んでくれたみたいだね。僕も別でプレゼントがあるから楽しみにしていて」
「ルシアン様、ありがとうございます」

 耳元でルシアンに囁かれ、アマリリスは早まる鼓動を隠して平静を装った。

(なっ、なんなの!? いつもならテオ兄様の前でこんな風に触れてこないのに……!)

 ブレスレットの宝石の光はアマリリスの感情に反応して、ますます色を深めた。

 それを見たテオドールは眉間に皺を寄せる。一方、ルシアンはすこぶる上機嫌で、軽やかな手捌きで政務をこなした。

 数日後、テオドールからは鮮やかなティールブルーの宝石がついた小ぶりな指輪を、ルシアンからはパープルダイヤモンドがあしらわれたレースのチョーカーを個別にプレゼントされ、常に身につけるよう笑顔で頼まれたのだった。