【番外編】イケメン警察官、最初から甘々でした。

玄関前の通り角――
その一画に、やけに色の鮮やかな光景があった。

大きな花束。
そして、ふたりの姿。

「……いたね、やっぱり」

涼介が笑いながら言うと、美香奈も苦笑して頷いた。

「うん、絶対こうなるって思ってた」

車を停めて、ふたりはドアを開けた。
自然と――手が、つながれる。

やさしく、あたたかく、ふたりの指が絡み合う。

そして、ゆっくりと歩き出した。

「美香奈――! 神谷さん!!」
先に気づいたのは、美咲だった。

両手で抱えるほどの大きな花束を胸に、
ぱぁっと笑顔を浮かべて駆け寄ってくる。

「結婚、本当におめでとう!!」

美香奈が花束を受け取ると、
すぐ隣で長谷川も深々と頭を下げた。

「神谷さん、美香奈さん……心からおめでとうございます」

ふたりの顔は、どこか晴れやかで――
だけど、特に長谷川の目はやけに潤んでいた。

「……えっ? 長谷川さん、泣いてる……?」

「い、いや、これは……花粉です! この季節、ダメなんですよ、ほんと……」

言い訳しながら目元をごしごし拭く姿に、
美香奈と涼介は思わず笑ってしまった。

「2人とも……ありがとうね、いつもいつも」

涼介の落ち着いた声に、ふたりは同時に頷いた。

そのとき、美咲がぐいっと美香奈の腕を引き寄せ――
小声で耳打ちする。

「ねぇ、私、最近さ……さりげなく長谷川さんに“圧”かけてるの。そろそろ本気出さないとね~?」

そのあまりに真顔の“こそっ”に――
美香奈は堪えきれず、吹き出した。

「えっ、なになに? 今、何話してた?」

長谷川が眉をひそめて聞くと、
美咲と美香奈は顔を見合わせて――さらに笑い出した。

新しい生活の入り口に、
笑い声と、花の香りと、祝福が満ちていた。