【番外編】イケメン警察官、最初から甘々でした。

「……それで、本当に涼介でいいの? 冗談じゃなくて」

「そうそう、こんな無愛想で、笑わないって評判の警察官で大丈夫かい?」

弘信の言葉に、美香奈は思わず顔を上げ、微笑んだ。

「そんなことありませんよ。
涼介さんは……いつだって、すごく優しいですし、
たしかにちょっと不器用で、“感情の出し方”が苦手なところはあるかもしれませんけど……
私にはちゃんと、たくさん表情を見せてくれます。
そのギャップがすごく可愛くて、でも、警察官としての彼も――普段の彼も――」

そこでふと、我に返ったように――

「……あ、すみません、なんか……話しすぎちゃって……」

頬を赤らめて、うつむく美香奈。

それを見た恵は、にこにこと笑いながら言った。

「まあ……こんなに愛されてるなんて! 羨ましいわねぇ」

弘信もまた、感慨深げに。

「我が息子なのに、知らなかった顔を――
美香奈さんはもう、ちゃんと知ってくれてるんだなぁ」

その隣で、涼介は顔を覆うようにして黙り込んでいた。

終始、和やかで笑いの絶えない食事会。

デザートとお茶を楽しみながら、お開きが近づいたころ――

恵がふいに、柔らかい口調で言った。

「美香奈さん……これまでのこと、涼介から色々聞いてるわ。
大変なことをたくさん乗り越えてきたのね。
ご両親のことも、ね」

美香奈は、わずかに視線を伏せる。

「でもね、これからは……“本当の親”だと思って頼ってくれていいのよ?
私たち、子どもは涼介しかいないんだから。
娘がひとり増えるくらい、ぜんぜん平気」

そして冗談まじりに。

「私ね、娘とショッピングに行くのがちょっと憧れなのよ~。
服選んでもらったり、美容の話したり」

涼介が苦笑いしながら言う。

「……母さん、美香奈も仕事してるんだから、そんなに付き合えないよ」

「わかってるわよ、もう暇で暇でどうしようもない時だけでいいのよ」

そのやり取りに、美香奈も思わず笑って――

「……本当に、ありがとうございます」

座ったまま、深く頭を下げた。

あたたかくて、やさしくて、
そしてちょっと賑やかな“家族”の時間。

この日のことは、きっとずっと忘れない。

――そして、数日後。
6月15日。
ふたりは正式に、夫婦となる。