【番外編】イケメン警察官、最初から甘々でした。

日曜の昼下がり。
都心の静かな路地に佇む、落ち着いた和食のお店の個室にて。

婚姻届をテーブルにそっと差し出すと、
篠宮政吉と真木弁護士がそれぞれのペンを手にした。

「こういうの、緊張するなぁ……」
と篠宮が言えば、
「いやいや、わたしなんか、まるで父親の気分ですよ」
と真木が柔らかに笑う。

涼介が頼んだ保証人は、捜査一課の上司・篠宮課長。
美香奈は、法律の世界へ導いてくれた恩人、真木弁護士にお願いした。

篠宮が住所欄を書きながらぼそりと呟く。

「交番から転属してきた時はな……正直、神谷のこと、怖かったんだぞ」

「……え? 部下なのに、怖いんですか?」

美香奈が目を丸くすると、
篠宮は真顔でこう言った。

「視線で人殺せそうだったろ、あの頃」

一瞬の沈黙のあと――
全員、どっと笑った。

「けどな……今の神谷は違う」

笑いのあと、篠宮の口調が少し落ち着く。

「厳しく追及する姿勢は変わらないが、
押すべきとき、引くべきときの“見極め”ができるようになった。
そして……ただ検挙するだけじゃなく、
ちゃんと、被害者の心にも目を向けるようになった」

「それもわざとらしくじゃない。
……本当の意味で、“正義”を貫こうとしてる男になったと思ってるよ」

その言葉に、美香奈はそっと涼介の横顔を見る。
静かに、でも誇らしげに――そのまなざしを受け止めていた。

一方、真木もまた、美香奈の方へ視線を向ける。

「橋口さん。君も、最初に会ったころからずいぶん変わったよ」

「……変わった、ですか?」

「うん。あの頃はどこか自信なさげで、
まるで“誰にも必要とされてない”と感じていたような顔をしていた。
でも今は、法律事務所で中心に立つリーガルワーカーとして、
本当に頼りになる存在になっている。君が必要だと、多くの人が思ってるよ」

「……真木先生……」

「だから今日の保証人、私は嬉しいです。
ちょっと照れますが、まるで娘を送り出す父親の気持ちですよ」

照れ隠しのように笑いながら、真木は名前を書き入れた。

ふたりの保証人――
それはただの署名ではなく、
これまでの歩みと、これからの未来に、
静かに、しっかりと背中を押してくれる証だった。