翌朝、午前10時。
涼介はスーツではなく、珍しくシンプルなジャケット姿で病院に現れた。
すでに診察や処置も終わっていた美香奈は、
白いベッドに腰掛け、小さな水玉模様のバッグを膝に乗せていた。
顔色は昨日よりずっと良くなり、
咳は時折コホコホと漏れる程度になっている。
(……思ってたより、元気そうだ)
ひとつ安心した涼介は、ナースステーションで名前を告げ、
大部屋の中へと入っていく。
「橋口さん、少しだけ書いていただく書類がありますので――
お連れの方もご一緒に、ナースステーション前でお待ちくださいね」
看護師の言葉に、涼介は頷いた。
まだ彼の存在に気づいていない美香奈に、
一歩近づきながら名前を呼ぶ。
「……美香奈」
その瞬間、大部屋のどこかから、
「あら、どこかで見たことある人だわ……」という声が上がった。
すると、同室の女性たちがいっせいに涼介のほうに目を向ける。
もちろん、美香奈も。
ふと顔を上げた彼女は、視線がぶつかると、ぱっと花が咲いたように笑った。
ゆっくりとベッドから立ち上がる。
その直後――
「あっ、思い出した! あの人、駅前の交番のおまわりさんだわ! あそこの!」
声を上げたのは、向かい側のベッドの婦人だった。
涼介はその声に、静かに微笑むと一歩前へ出て軽く頭を下げた。
「……はい。南署にいました、神谷です」
その瞬間、部屋の空気がふわっと和らいだ。
「まぁまぁ、やっぱりそうだったのね!」
「奥様を迎えにきたのねぇ! 素敵な旦那さまだこと!」
「可愛らしい奥さんと、お似合いで羨ましいわ〜」
飛び交うおばさまたちのエールに、
美香奈は一瞬きょとんとしたあと――
ふわりと頬を赤らめ、涼介の腕に自分の腕を絡めた。
「うふふ……ちょっと、違いますけどね」
そう言いながら、
にこにこと嬉しそうに笑う。
涼介は、少し照れくさそうに視線を逸らしながら、
そのまま彼女をナースステーションへと促した。
部屋を出るふたりの背中には、
「お幸せにね〜!」
「元気になってよかったわよ〜!」
と、あたたかな声がいつまでも響いていた。
涼介はスーツではなく、珍しくシンプルなジャケット姿で病院に現れた。
すでに診察や処置も終わっていた美香奈は、
白いベッドに腰掛け、小さな水玉模様のバッグを膝に乗せていた。
顔色は昨日よりずっと良くなり、
咳は時折コホコホと漏れる程度になっている。
(……思ってたより、元気そうだ)
ひとつ安心した涼介は、ナースステーションで名前を告げ、
大部屋の中へと入っていく。
「橋口さん、少しだけ書いていただく書類がありますので――
お連れの方もご一緒に、ナースステーション前でお待ちくださいね」
看護師の言葉に、涼介は頷いた。
まだ彼の存在に気づいていない美香奈に、
一歩近づきながら名前を呼ぶ。
「……美香奈」
その瞬間、大部屋のどこかから、
「あら、どこかで見たことある人だわ……」という声が上がった。
すると、同室の女性たちがいっせいに涼介のほうに目を向ける。
もちろん、美香奈も。
ふと顔を上げた彼女は、視線がぶつかると、ぱっと花が咲いたように笑った。
ゆっくりとベッドから立ち上がる。
その直後――
「あっ、思い出した! あの人、駅前の交番のおまわりさんだわ! あそこの!」
声を上げたのは、向かい側のベッドの婦人だった。
涼介はその声に、静かに微笑むと一歩前へ出て軽く頭を下げた。
「……はい。南署にいました、神谷です」
その瞬間、部屋の空気がふわっと和らいだ。
「まぁまぁ、やっぱりそうだったのね!」
「奥様を迎えにきたのねぇ! 素敵な旦那さまだこと!」
「可愛らしい奥さんと、お似合いで羨ましいわ〜」
飛び交うおばさまたちのエールに、
美香奈は一瞬きょとんとしたあと――
ふわりと頬を赤らめ、涼介の腕に自分の腕を絡めた。
「うふふ……ちょっと、違いますけどね」
そう言いながら、
にこにこと嬉しそうに笑う。
涼介は、少し照れくさそうに視線を逸らしながら、
そのまま彼女をナースステーションへと促した。
部屋を出るふたりの背中には、
「お幸せにね〜!」
「元気になってよかったわよ〜!」
と、あたたかな声がいつまでも響いていた。



