帰宅したのは、日付が変わる少し前だった。
玄関で革靴を脱ぎ、
背広のポケットに手を入れたまま、
神谷涼介はふぅと深く息をついた。
すぐにスマホを取り出し、
長谷川にLINEを打つ。
『今夜は一晩入院。今は落ち着いてます。
美咲さんにも、改めてありがとうと伝えてほしいです』
送信を終えると、ものの十数秒で返信が届いた。
【(👍)】
そのシンプルなスタンプを見て、
涼介は小さく笑った。
(……あいつ、いつもこれだな)
そのままスマホを置き、
久しぶりにシャワーではなく湯船に湯を張る。
バスタブに浸かる間、頭に浮かんだのは――
病院で看護師に聞かれた、あの一言だった。
『旦那様でいらっしゃいますか?』
「ああ……」
湯気の中で、ぽつりと呟く。
その言葉の響きが、
自分の中に思いのほか自然に馴染んでいたことに、気づく。
「……もう、そういう時期か」
独り言のように呟いたあとは、
ふっと微笑んで、湯船に深く沈んだ。
その夜、涼介は久しぶりに
誰にも気を遣わず、誰かを守る緊張からも解き放たれて、
穏やかな一人の夜を過ごした。
そして、眠る直前――
スマホの待受け画面に浮かんだ、
笑顔の美香奈の写真を、
しばらく見つめたまま、そっと画面を伏せた。
玄関で革靴を脱ぎ、
背広のポケットに手を入れたまま、
神谷涼介はふぅと深く息をついた。
すぐにスマホを取り出し、
長谷川にLINEを打つ。
『今夜は一晩入院。今は落ち着いてます。
美咲さんにも、改めてありがとうと伝えてほしいです』
送信を終えると、ものの十数秒で返信が届いた。
【(👍)】
そのシンプルなスタンプを見て、
涼介は小さく笑った。
(……あいつ、いつもこれだな)
そのままスマホを置き、
久しぶりにシャワーではなく湯船に湯を張る。
バスタブに浸かる間、頭に浮かんだのは――
病院で看護師に聞かれた、あの一言だった。
『旦那様でいらっしゃいますか?』
「ああ……」
湯気の中で、ぽつりと呟く。
その言葉の響きが、
自分の中に思いのほか自然に馴染んでいたことに、気づく。
「……もう、そういう時期か」
独り言のように呟いたあとは、
ふっと微笑んで、湯船に深く沈んだ。
その夜、涼介は久しぶりに
誰にも気を遣わず、誰かを守る緊張からも解き放たれて、
穏やかな一人の夜を過ごした。
そして、眠る直前――
スマホの待受け画面に浮かんだ、
笑顔の美香奈の写真を、
しばらく見つめたまま、そっと画面を伏せた。



