診察室の前の椅子で静かに座っていた涼介に、
やがて看護師が近づいた。
「付き添いの方、お入りください」
案内されるまま診察室に入ると、
デスクに向かっていた医師が涼介の顔をちらりと見上げ、
その視線にすぐに理解を示したようだった。
「橋口さんは、今、奥のベッドで休んでもらっています。
すぐに処置を始めて、少し落ち着いてきましたよ」
涼介は小さく頷いた。
「……わかりました。ありがとうございます」
医師はパソコンのモニターに目を戻しつつ、
彼女の診療記録を確認しながら話し始めた。
「土曜日と、今日の夕方に、近所のクリニックを受診されてますね。
抗菌剤も服用されていたようですが――」
お薬手帳に貼られたラベルをちらりと見て、
医師は小さく息をついた。
「……これだけ進んだ肺炎であれば、本来は時間外でも紹介を入れていただきたかったところです」
その声には責めるような調子はなかった。
ただ、判断が難しい症例に対する、医療者としての誠意がにじんでいた。
涼介は少しだけ肩を落とし、静かに応じた。
「……そうだったんですね。
本人も、かなり無理をしていたようで……」
医師は椅子を軽く回転させ、真正面から向き直る。
「はい。現状ですが――
胸部CTで見る限り、肺はかなり広範囲に炎症しています。
……よく、あの状態で普通に受け答えしてたなと思いましたよ」
少しだけ冗談めいた言葉だったが、
その裏には驚きと懸念が込められていた。
「酸素状態が不安定なので、現在は酸素を吸入させています。
一晩中吸わせるほどではないにせよ、
今夜は点滴を継続して、明日朝まで様子を見たいと考えています」
「……わかりました」
「今日のクリニックでも点滴はされてますが、
脱水が進んでいて、口からの摂取もあまりできていなかったようですね。
咳がひどく、飲んでもすぐに戻してしまったと本人も言ってました」
その一言に、涼介は拳をゆっくり握った。
彼女の強がりが、今になって刺さる。
(……あれだけきつそうにしていたのに、
俺は、何をしてた……)
唇をわずかに結び、
「……ありがとうございます」とだけ言葉を返した。
彼の声は、どこまでも低く、静かだった。
やがて看護師が近づいた。
「付き添いの方、お入りください」
案内されるまま診察室に入ると、
デスクに向かっていた医師が涼介の顔をちらりと見上げ、
その視線にすぐに理解を示したようだった。
「橋口さんは、今、奥のベッドで休んでもらっています。
すぐに処置を始めて、少し落ち着いてきましたよ」
涼介は小さく頷いた。
「……わかりました。ありがとうございます」
医師はパソコンのモニターに目を戻しつつ、
彼女の診療記録を確認しながら話し始めた。
「土曜日と、今日の夕方に、近所のクリニックを受診されてますね。
抗菌剤も服用されていたようですが――」
お薬手帳に貼られたラベルをちらりと見て、
医師は小さく息をついた。
「……これだけ進んだ肺炎であれば、本来は時間外でも紹介を入れていただきたかったところです」
その声には責めるような調子はなかった。
ただ、判断が難しい症例に対する、医療者としての誠意がにじんでいた。
涼介は少しだけ肩を落とし、静かに応じた。
「……そうだったんですね。
本人も、かなり無理をしていたようで……」
医師は椅子を軽く回転させ、真正面から向き直る。
「はい。現状ですが――
胸部CTで見る限り、肺はかなり広範囲に炎症しています。
……よく、あの状態で普通に受け答えしてたなと思いましたよ」
少しだけ冗談めいた言葉だったが、
その裏には驚きと懸念が込められていた。
「酸素状態が不安定なので、現在は酸素を吸入させています。
一晩中吸わせるほどではないにせよ、
今夜は点滴を継続して、明日朝まで様子を見たいと考えています」
「……わかりました」
「今日のクリニックでも点滴はされてますが、
脱水が進んでいて、口からの摂取もあまりできていなかったようですね。
咳がひどく、飲んでもすぐに戻してしまったと本人も言ってました」
その一言に、涼介は拳をゆっくり握った。
彼女の強がりが、今になって刺さる。
(……あれだけきつそうにしていたのに、
俺は、何をしてた……)
唇をわずかに結び、
「……ありがとうございます」とだけ言葉を返した。
彼の声は、どこまでも低く、静かだった。



