【番外編】イケメン警察官、最初から甘々でした。

「神谷さん、今すごく忙しくしてるみたいでさ。
美香奈さんと、連絡とってる?」

長谷川の言葉に、スマホを見つめながら美咲は首をかしげた。

最近、美香奈からのLINEは短く、そして少ない。
それに……今日で仕事を休んで何日目だろう。

なんとなく胸騒ぎがして、思わず発信ボタンを押した。

――トゥルルル……

(出ない……? いや――)

「……ごほっ、ごほっ、……み、さき、ちゃん……?」

電話の向こうから聞こえた声は、
掠れていて、まるで空気の足りない空間で無理やり搾り出したようなものだった。

「……ちょ、美香奈!? 今すぐ行くから、動かなくていいからね!!」

返事も待たずにスマホを切り、玄関から飛び出した。
美香奈の家は美咲の家から徒歩8分程度のところにある。

バッグも上着も持たず、着の身着のまま――
走った。
美香奈の家まで、全力で。

インターフォンを何度も押すと、
しばらくして、ゆっくりと扉が開いた。

そこに立っていた美香奈の姿に、美咲は言葉を失う。

顔色は青白く、目の下にはくっきりとクマ。
毛布を羽織っているが、肌は冷たそうに見えた。

「美香奈……っ、大丈夫……? 病院、行った?」

「……うん、土曜と……さっきも。行ってきたの。
でも……点滴だけで、なんか……あんまり、良くなってない気がするの……」

話すたびに咳が漏れ、肩が大きく揺れる。

「ちょっと、入るよ。もう、座って。
何も言わなくていいから、水、ある? 薬飲んだ? 冷えピタ貼る?」

怒涛のように言葉を連ねながら、
美咲は靴を脱ぎ捨てて家に上がった。

「……ほんとに……来てくれて、ありがと……」

その言葉が、かすれて泣きそうで、
美咲は一瞬だけ、胸の奥がつんと痛んだ。

「当たり前じゃん。友達でしょ。
それに……ちゃんと伝えておかないと。
あの男、全然来ないなら、あたしが引っぱたきに行くから」

美香奈の唇が、かすかに笑みの形を作った。