【番外編】イケメン警察官、最初から甘々でした。

夜。
美香奈はふかふかの毛布に包まれ、ベッドの上にいた。

加湿器の湯気がふわふわと立ちのぼり、
枕元には常温の水と薬。
涼介は腕をまくって、冷えピタを貼り替えていた。

「……ほんとに土日で治すつもりなら、ちゃんと寝るしかない」

「……月曜から忙しくなるんでしょ?」

「ああ。来週は連日立て込みそうだ。
だから、今のうちに治せ」

「そんな無茶な……病気は、気合じゃ治らないよ……」

「じゃあ、君の『キスで治る説』はどうなんだ」

「えっ、それは……気分的な問題であって……」

涼介はきっちり冷めた顔で、美香奈の額を押さえた。

「非科学的だ」

「……冷たい……」

美香奈が不満げに唇を尖らせる。

「前はもっとやさしかったのに……」

「甘やかしすぎると、調子に乗るだろ」

「乗ってませんっ……!」

ふてくされたように毛布を口元まで引き上げる彼女に、
涼介はひとつ、ため息をついてから立ち上がった。

薬と水を差し出すと、いつものように無言で促す。

美香奈はしぶしぶ薬を飲み、
ごくごくと水を口に含んでから、上目遣いで彼を見た。

「……キスしてくれたら、元気出る気がするのに」

「……」

その言葉に、涼介はわずかにまぶたを伏せ、目をそらす。

「……それ、俺にも効くってわかってて言ってる?」

「……え?」

「我慢してるの、俺のほうなんだけど」

ぼそりと吐かれたその声は、まるで熱を持っていた。

けれど次の瞬間にはいつもの顔に戻り、
タオルケットを整えて、背中に手を添える。

「寝ろ。冗談が過ぎると、また熱上がるぞ」

「う……はい」

素直に目を閉じながら、美香奈は思った。

(……あの人、ほんとはやさしすぎるくらいやさしいのに。
それを口にしないで、我慢ばっかり……)

その夜。
涼介は美香奈の傍らに座りながら、ひとり読書灯だけを点け、
何度も毛布を整えながら、そっと彼女の手を握りしめていた。