【番外編】イケメン警察官、最初から甘々でした。

出前のお寿司は、思った以上に美味しかった。
けれど、美香奈の箸の進み方は、どこか鈍かった。

涼介はその様子を見ながら、じっと美香奈の顔を覗き込む。
「……なんか元気なくない? 疲れてるだけ?」

美香奈は一瞬手を止め、「ううん」と小さく首を振るが、言葉は曖昧だった。
いまいち目線も合わない。話しているようで、どこか心ここにあらず——そんな感じだった。

「美香奈、大丈夫? 食欲ない?」

心配そうに聞かれると、美香奈は「おいしいよ」と微笑みながら答えるが、その笑顔は少し引きつっていた。

食後、涼介は立ち上がり、ソファに座る美香奈の前でしゃがみ込んだ。
美香奈の頬にそっと手を添えると、やさしい声で問いかける。

「甘々タイムする? それともお話ししたい?」

その二択に、美香奈はほんの一瞬迷ってから、「どっちも」と呟いた。

涼介はふっと笑って、美香奈の隣に腰を下ろす。そして、彼女の手をぎゅっと握った。
部屋の中に、静かでやわらかな時間が流れる。

その沈黙を破るように、涼介がゆっくりと口を開く。

「……全然言ってくれないからさ。出張中、何かあったんでしょ。
昨日も“何もなかった”って言ってたけど、俺にはわかるよ。
無理してる時の声してた。どれだけ一緒に乗り越えてきたと思ってるの?」

その言葉は、静かな愛情と、ほんの少しの寂しさを孕んでいた。

美香奈は、ぐっと唇を噛むと、ぽつりぽつりと話し始めた。
「カフェで……女性のクライアントに、大きな声で怒鳴られて、机も叩かれて、
怖かった。でも、平気なふりして、乗り切った」

その声には、まだ少し震えが残っていた。

涼介は何も言わず、そっと美香奈の頭を引き寄せ、自分の胸元に抱きしめた。
美香奈は、黙ってそのぬくもりに身を預けた。

しばらくそうしていると、涼介がぽつりと呟く。

「……言ってくれて、ありがとう。
怖かったのに、ちゃんと話してくれて……俺、美香奈のこと、ますます守りたくなったよ」

その言葉に、美香奈の目には、また少し涙が滲んだ。