【番外編】イケメン警察官、最初から甘々でした。

中年男子たちの“キュンキュン女子会”のような食事会を終え、ホテルの部屋に戻った美香奈は、ドアを閉めると同時にふぅと大きく息を吐いた。
パンプスを脱ぎ捨て、スーツのジャケットを椅子に投げかけて、そのままベッドにダイブする。

「はぁ~~~……」
天井を見つめたまま、全身を大の字に広げて伸びをすると、ふいに頭の中に浮かぶのは——涼介の顔だった。

(今日のこと、話したら絶対怒るよな……)
カフェでのトラブル、茨城署の警官とのやり取り、そして“彼女さん”発言……。
別に悪いことはしていない。でも、涼介に話したら絶対、「なんで黙ってた」って眉をひそめるだろう。
——それが嫌だった。

(……うん、黙っておこう)

目を閉じて、そのまま寝てしまおうかと思った矢先、スマホが手元でブルッと震えた。
画面に表示された名前は、まさにその涼介だった。

「……あ、もしもし」

『順調か? なにごともなかったか?』

その声はいつもの低く落ち着いた調子。
美香奈は自然と微笑んで、静かに答える。

「うん、無事に3日間終わりそう。明日のお昼に裁判所に書類提出したら帰るから。たぶん、4時過ぎには東京に着けると思う」

『わかった。じゃあ定時で上がれるように、明日午前中で仕事全部終わらせるわ。』

息を吐く音すら少し軽くて、心なしか嬉しそうな涼介の声が、スマホ越しに優しく胸に染み込む。

電話を終えてスマホをベッドサイドに置いたとたん、美香奈は胸の奥にじわりと広がる罪悪感に息を詰まらせた。

——別に言ってもよかった。でも、言えなかった。

それは、心配をかけたくなかったからじゃない。
もしまた何か起これば、今度こそ涼介は壊れてしまうかもしれないと——どこかで、わかっていた。

人一倍責任感が強くて、自分よりも誰かを優先してしまう人。
そして、誰よりも美香奈を思ってくれている人。

(……ごめんね、涼介くん)

静かなホテルの部屋。
自分の心臓の音だけが、少し速く感じた。