【番外編】イケメン警察官、最初から甘々でした。

出張当日の朝。
涼介はどこかそわそわと落ち着かず、キッチンでコーヒーを飲む美香奈の後ろをついて歩いていた。

「夜遅くは出歩いちゃいけないからな。ホテルの鍵は絶対首から下げとけ。人通りの少ない道はなるべく避けて…」
次から次へと、防犯教室さながらの忠告を繰り出す。

美香奈はコーヒーを一口飲んでから、ふふっと笑い、「心配しないで」と振り返った。

「真木弁護士は柔道初段だし、今回一緒に行く谷原弁護士なんて元警察官なんだよ? 特技、逮捕術だって。」

「……元警察官?」
涼介の眉がぴくりと動く。どこか釈然としない顔。

「それはそれでやだな。」とぽつりとこぼした。

美香奈はその不機嫌そうな言い方に苦笑しながら、「涼介くん、谷原先生って親くらいの年齢の人だよ? 私はむしろスマホのマップ係で、常に道案内してる立場なんだから。」

そう言ってスマホをひらひらと振る。

「それに、逮捕術なんて見せる機会ないほうが安心でしょ?」

涼介はしばらく黙ったまま、無言で荷物を持つ美香奈のキャリーケースの取っ手を奪うように持ち上げる。

「……じゃあ、ちゃんと帰ってこいよ。俺、三日間まともに眠れなさそうだから。」

そう言った目は、どこか拗ねていて、でも何よりも美香奈の無事を願っていた。