涼介は警察署の廊下を歩いていたとき、前方にダンボール箱を抱えた長谷川を見つけた。重たそうな荷物にもかかわらず、長谷川はそれをものともせず、まるで何か良いことでもあったかのように満面の笑みを浮かべている。

「お前はいつも幸せそうだな」と声をかけると、長谷川はすぐにこちらを向き、「神谷さんほどじゃないですよ」と軽口で返してきた。

視線を落として、ダンボールに目を向けると、長谷川はそれに気づいたようで、「これ、交番の拾得物ですよ。1ヶ月でこの量。金でも混ざってたらテンション上がるんですけどね」と笑いながら言う。

涼介は相槌も打たずに、「……で、美香奈の友達とはどうなんだ」と単刀直入に切り込んだ。

「すごくいい感じですよ!観閲式も見に来るって言ってくれてますし」
長谷川は照れたように言うが、どこか自信に満ちている。

涼介はその展開の早さにやや驚きながらも、「楽しそうで何よりだ」とだけ言った。

すると長谷川は、「今度、ショッピングモールで買い物に付き合ってほしいって言われてるんですよ。美咲ちゃんが、美香奈さんも誘ったみたいで。神谷さんもどうですか?」と誘ってきた。

休日まで長谷川の顔を見たくないと思った涼介は、「断る」とあっさり返す。

しかし長谷川は、にやっと笑って、「あれ、いいんですか?神谷さんの目が届かないところで、僕が美香奈さんと行動を共にしても」などと、いかにも挑発するように言ってくる。

その言葉に涼介はピクリと眉を動かし、ムッとした表情を浮かべながら、「……行けたら行く」と、口をついて出た返事に自分でも呆れたような気持ちになっていた。