「どうぞ」


そういって私を中に招いてくれる。


誰もいない、二人だけの教室。


いつものように楓也先生が教卓の横にある席に座り、私は向かい合うかのように座る。


そうして目が合うと、二人だけになったせいか、柔らかくなった顔の先生が見れる。



「どうですか、最近は。」


「どうですか?(笑)うーん、やっぱりしんどいって思うことはたくさんあります。」



ここは先生が担任している教室。


月に一度くらいのペースで、私はいつも先生に相談に乗ってもらっている。


こうして放課後、誰もいない教室で話すことが、私と先生の特別な時間になっていた。


相談に乗ってもらっていることは自身の担任の先生も知っていて、周りの友達も知っている。


だけど、何をどこまで話しているかは誰も知らない。


私と先生の、二人だけの秘密。