パン屋から戻り、家に入ろうとすると
なぜか朔さんが玄関の外に立っていた。
「おはようございます」
「草詰さん」
「どうしたんですか?」
「助けてもらえませんか?」
「はい…??」
「いきなりですが、
僕の婚約者になってくれませんか?」
「………ん?えっ?!
ほんとにいきなりですね!」
な、なに?!
私たちそんな関係だった?!
「いや、もちろん、偽のです。
実は今、姉が来ていて、
僕にお見合いをさせようとしているんです。
まぁ、母の差し金なのは
わかっているのですが。
なんとか断りたいので、
その場しのぎで、
偽婚約者になってくれませんか?」
「え…いや、
かなり怪しまれそうですけど…」
「僕が話をするので、
黙っていればいいです。
それで後日婚約は破棄になったと言えば
済む話なので」
いやいやいやいや、
怪しすぎでしょ…
だってさっき家政婦として
お姉さんに挨拶したのに、
あとで婚約者なんて言ったら…
嘘くさい。
「あ、では、これを…」




