玄関扉を完全に閉めず、
数センチだけ開けて、
耳をくっつけた。


「来るなら連絡くらい入れてよ」
「入れたわよ。
朔に手紙で」
「手紙って…ねーちゃん…
相変わらずアナログだな」
「朔からきいてないの?
相変わらず仲が悪いみたいね、あなたたち」
「昔ほどではないけど」

雪さんのため息がきこえた。

「ここから出たいでしょう?」
「もちろん」
「だからさっさと結婚しなさいって」
「…またその話」

太陽がいつもより
トーンの低い声で言った。

「そうよ。お見合い候補、
今回はたいが好きそうなルックスの子を
厳選したみたい。
見てちょうだい」

お、お見合い…!
そうだよね、太陽はお金持ちの御曹司みたいだし、
同じような家のお嬢様と結婚するんだな…

「だから…お見合いはしないって」
「わかるわよ。その気持ちは。
でも私もこれ以上お母さんを
なだめられないのよ」
「なんで俺だけ…」
「朔にも同じことを言うわよ」


しばらく沈黙があって、
太陽がこう言った。

「まだ誰にも言ってなかったけど、
実は俺、婚約してるから」