「…え?はい…
いいですよ」

一番おいしそうなのを、
選んで、一切れ箸で掴むと
朔さんの口元へ運んだ。

「……」

うわぁぁぁ、なんて整ったお顔だこと。
本当に同じ人間なの?!

しかも、こんな至近距離で…
なんか緊張する。

「んっ…おいしいです…」

朔さんはそう言うと、にっこりした。

「っ……」

その時、色んな感情が沸いてきて、
何も言葉が出てこなかった。



この一週間の努力が報われたようで嬉しい。

もっと頑張りたくなる。

初めて味わう達成感、気持ちいい。

いつもとげとげしてる朔さんの笑顔にとてもドキドキ。

太陽と雷にも食べて欲しい。


長い間心の中は『無』で生きてきたこの私の中で、
こんなたくさんの気持ちが沸き上がるなんて…



「今日はここで夜ごはんを
食べてもいいですか」

朔さんはウォーターサーバーの方へ
タンクを運びながら言った。

「もちろんです!
でも、私、まだ
卵焼き以外は前から何も進歩してないです!
太陽はダメダメばっかり言うんですよ」
「だから倒れるまで頑張ってたんですか?
太陽兄さんの為?」


朔さんはちょっと不服そうな顔をした。