待ってー!私は今卵焼きを焼いて…
「っ!!ない!!
卵が…あれ?」
ん?ここは共有のキッチン…
プライベートの部屋のキッチンで
練習してたはずなのに…
あ、そういえば…
最後の卵がなくなって、
こっちのキッチンに移動したんだった!
辺りを見回すと床に卵の殻が散らばっている。
えー、掃除面倒くさいなぁ。
「よいしょ」と言って立ち上がると、
私を呼んだのは朔さんだとわかった。
ダイニングテーブルのそばにある
ウォーターサーバーの水がなくなったらしく、
新しいタンクを運んでいる最中のようだった。
両手に二つ軽がる抱えて静止してる。
すご。
「すみません、なくなってましたか!」
「はい。でも、力仕事は自分でやるので。
それより、大丈夫ですか?
顔色が悪いですが」
「大丈夫です。
床で寝ちゃったので
体は痛いですけど、あはは」
「あははって…
あ…この卵焼き、おいしそうなので、
1つ頂いてもいいですか?」
「…え?」
い、今、なんて…?!
おいしそうだって?
なんと嬉しいお言葉!
つまり、きれいに焼けたってことじゃん、
進歩してる、私ーっ!
「全部練習で作ったやつなんで、
好きなだけ食べてください。
捨てるのもったいないので、
私全部食べてて…
毎日卵しか食べてない(笑)」
「いや、笑えないです。
きちんとバランスよく食べないと体調を崩しますよ。
あまり無理しないでください。
まぁ、僕たちのせいなんでしょうけど…」
朔さんが申し訳なさそうに目線をそらした。
「この前はすみませんでした」
ん?
朔さん、今日はいつもよりとげとげしてない。



