「ええ!?」
「もういらねーっつってたから」
人が住めそうなほど大きなクローゼットを開けてみると、
既に半分ほどおしゃれなもので埋めつくされている。
しかも高そうなものばかり。
靴、服、鞄、帽子、部屋着や
タグがついたままの未使用の下着まで!
どゆこと?!
下着買ったけど着なかったみたいな?
サイズも私とだいたい同じみたい。
ありがたく使わせてもらおう。
バスルームはヨーロッパの
高級ホテルのようだった。
しかも、空が見えるジャグジーと
ひのきの露天風呂の二つ。
ここは元ホテルなんだろうか…
巨大な収納スペースには
高級そうなタオルとスキンケア用品、
メイク道具一式が使いこなせない
と思うくらい置いてある。
「あー、それも前の奴が置いてった。
大量に買って備えたけど
すぐやめたからそんままだな」
「これも使っていいんですか?」
「あぁ」
「ありがとうございます!
助かります」
無一文なので!
「仕事のマニュアルはここにあるから読めよ」
彼はテーブルの上にある
辞書みたいに太い冊子にトンっと触れると、
私の手前にある椅子をひいて、
どうぞという仕草をした。



