たった四文字。
その四文字が命の重さであり、私の罪の重さだ。
「実果ちゃん、咲良の最期の言葉聞いてどう? まだ何も知らないって嘘つける?」
「……私は……」
私の家は母子家庭で裕福とはいえなかった。
そのせいで塾にも行けなかったが、勉強は問題なかった。ただ私の行きたい大学は油絵で有名な美術デザイン学科のある大学だった。
その大学の美術デザイン学科では高校三年間で一度でも公募で大賞を獲ればら授業料が一年間免除されるのだ。
さらに受験なしでその学科へ推薦入学でき、毎年特待生として授業料の援助もあることを知った。
「本当は……ちゃんと受験して奨学金でいくつもりだったの」
「それで?」
川本さんが私に言葉の続きを促す。
「でも……お母さんが病気で……入院費用が必要になって。受験料や授業料免除とか……公募で大賞とれればなって思った」
「知ってる。高二の時、美術展の公募であなたは特選に選ばれたけど、大賞は咲良だった。だからあなたは高校三年生の最後の秋、公募でどうしても大賞を獲る必要があった。でもその公募であなたはあえなく落選。また大賞を獲ったのは咲良だった」
川本さんが私の両肩をぐっと爪を立てて握った。
「だからって何で?! あなたと咲良は親友だったんでしょ?!」
私は川本さんの手を払いのけると川本さんをじっと見つめた。
「そう。親友だったよ……」
確かに親友だった。
でも大嫌いな親友だった。
咲良にはなんでも話せたし、自慢でもあった。咲良は美人で絵の才能もあって人当たりもよく、スポーツもできた。みんなから好かれていた。
(だから……私はずっと咲良が妬ましかった)
「川本さんは何も知らない」
私がどれほど咲良の存在で自分の無力さ、不甲斐なさを感じたのか。絶望と敗北感を味わったのか。
「何も知らないのも罪だよ」
私が誰かに吐露した初めての本音と言える言葉は掠れていた。



