「さっさと開けてよ!」
川本さんは動けない私に舌打ちをすると語気を強めた。
「早くっ!」
「……っ」
観念した私は震える手で少し錆びついた缶を開ける。
中から出て来たのは無数のノートの切れ端だった。
切れ端には文字が書いてあり、その筆跡はよく知っている人物のものだった。
「これ……咲良の手紙?」
「読んでみて」
私は缶の中の一番上にあった一枚を指先でそっと拾い上げる。そこには丁寧な筆致で短い文章が書いてある。
──『実果ちゃんはどうしてあんな嘘ついたんだろう。私じゃないのに』
私はその一枚を見ただけで全身の力が抜けそうになる。
嘘をつき咲良を死に追いやる原因を作ったのは、間違いなく私なのだ。
「ほら、次」
「ゆるして……もう読めない」
「あっそ」
川本さんは私から缶を取り上げると、次々と咲良の書いたメモを読み上げていく。
──『私は何もしてない……誰も信じてくれない』
──『実果ちゃんの悪口をSNSに投稿なんてしてないし、実果ちゃんの絵を盗作もしてない』
──『先生と不倫なんかもしてないし……それなのに大学の推薦取り消しなんて酷いよ』
──『念願の全国高校美術展の大賞も取り消された』
──『生きていたくない』
川本さんは淡々と読み上げていく。
私は思わず大きな声を出した。
「もうやめて!」
川本さんは私の声が聞こえていないかのように、こちらを見ることもなく咲良の悲痛な叫びが書かれた最後の一枚を読む。
──『死にたい』
川本さんは動けない私に舌打ちをすると語気を強めた。
「早くっ!」
「……っ」
観念した私は震える手で少し錆びついた缶を開ける。
中から出て来たのは無数のノートの切れ端だった。
切れ端には文字が書いてあり、その筆跡はよく知っている人物のものだった。
「これ……咲良の手紙?」
「読んでみて」
私は缶の中の一番上にあった一枚を指先でそっと拾い上げる。そこには丁寧な筆致で短い文章が書いてある。
──『実果ちゃんはどうしてあんな嘘ついたんだろう。私じゃないのに』
私はその一枚を見ただけで全身の力が抜けそうになる。
嘘をつき咲良を死に追いやる原因を作ったのは、間違いなく私なのだ。
「ほら、次」
「ゆるして……もう読めない」
「あっそ」
川本さんは私から缶を取り上げると、次々と咲良の書いたメモを読み上げていく。
──『私は何もしてない……誰も信じてくれない』
──『実果ちゃんの悪口をSNSに投稿なんてしてないし、実果ちゃんの絵を盗作もしてない』
──『先生と不倫なんかもしてないし……それなのに大学の推薦取り消しなんて酷いよ』
──『念願の全国高校美術展の大賞も取り消された』
──『生きていたくない』
川本さんは淡々と読み上げていく。
私は思わず大きな声を出した。
「もうやめて!」
川本さんは私の声が聞こえていないかのように、こちらを見ることもなく咲良の悲痛な叫びが書かれた最後の一枚を読む。
──『死にたい』



