「うわぁ、綺麗だね」
川本さんはスマホで写真を撮りながら無邪気に桜の木の下ではしゃいでいる。
「ね、実果ちゃんも桜、綺麗だと思うでしょ?」
「あ、綺麗というより……少し怖い、かな」
「怖い? どうしてそう思うの?」
川本さんから、ふっと笑顔が消えると真面目な顔で私をじっと見つめた。
「それは……」
私は口籠る。
桜を見れば恐怖にまみれた、忘れたい過去を思い出す。私が人生で唯一、犯した罪だから。
「ここ、人が死んだ場所だもんね」
(──え?)
ゾッとするような冷たい声色で川本さんが発した言葉に私は体が硬直する。
(いま、何て……?)
「実果ちゃんも知ってるよね? ここで咲良が首を吊って死んだこと」
久しぶりに聞いたその名前に、私は無意識に首をぶんぶんと振った。
「私……っ、なにも……知らない!」
そうずっと知らないことにしていた。
ずっとそうすることで自分を守ってきたから。
だって口を開いて真実を話せば、私は誰がどうみても被害者ではなくなってしまうから。
「ほんと嘘つきなんだね」
「か、川本さんこそ……急にどうしてそんなこと言うの?」
川本さんは、くすっと笑う。
「死人に口無しって言うのは嘘なんだよ」
「え?」
川本さんは自分の鞄から園芸用のスコップを取り出すとしゃがみこみ、桜の木の根元をザクザクと掘っていく。
川本さんはスマホで写真を撮りながら無邪気に桜の木の下ではしゃいでいる。
「ね、実果ちゃんも桜、綺麗だと思うでしょ?」
「あ、綺麗というより……少し怖い、かな」
「怖い? どうしてそう思うの?」
川本さんから、ふっと笑顔が消えると真面目な顔で私をじっと見つめた。
「それは……」
私は口籠る。
桜を見れば恐怖にまみれた、忘れたい過去を思い出す。私が人生で唯一、犯した罪だから。
「ここ、人が死んだ場所だもんね」
(──え?)
ゾッとするような冷たい声色で川本さんが発した言葉に私は体が硬直する。
(いま、何て……?)
「実果ちゃんも知ってるよね? ここで咲良が首を吊って死んだこと」
久しぶりに聞いたその名前に、私は無意識に首をぶんぶんと振った。
「私……っ、なにも……知らない!」
そうずっと知らないことにしていた。
ずっとそうすることで自分を守ってきたから。
だって口を開いて真実を話せば、私は誰がどうみても被害者ではなくなってしまうから。
「ほんと嘘つきなんだね」
「か、川本さんこそ……急にどうしてそんなこと言うの?」
川本さんは、くすっと笑う。
「死人に口無しって言うのは嘘なんだよ」
「え?」
川本さんは自分の鞄から園芸用のスコップを取り出すとしゃがみこみ、桜の木の根元をザクザクと掘っていく。



