「えっと……今日バイトかも」
「実果ちゃんたら。もう、バイトは月と木って言ってたじゃん」
「あ、だね。今日金曜だっけ。ええっと、確か友達とイタリアンだったと思う」
「友達って誰? 私も行きたいな、だめ?」
私は川本さんの笑顔を見ながら冷や汗が出て来る。
きっとバレている。
私があえて川本さんを避けていることに。
私は迷ったが、こんなに川本さんが私に執着する理由を純粋に知りたくもなってくる。
「……じゃあ私、イタリアン断るから、お花見いく?」
「ほんと実果ちゃん?! やったぁ」
川本さんの満面の笑みに、私はもしかしたらあのことを気にしていたのは私だけで、川本さんは同じ高校出身の私とただ友達になりたいだけなのかもしれないと思う。
「じゃあ実果ちゃん。二十時に湊川田公園の入り口で。晩御飯は家で食べてきてね」
「ご飯はわかったけど、湊川田公園までいくの?」
私はその公園の名前に眉を顰めそうになる。
「うん、あそこの桜が一番綺麗じゃない?」
「それはそうだけど……」
「じゃあまた夜に〜」
川本さんは私の返事も待たずに、手のひらをヒラヒラさせると廊下を駆け降りていった。



