「はぁあ。明日から……私どうなっちゃうのかな」
月夜に照らされて、ひらりひらりと舞い降りてくる桜の花びらはまるで涙みたいだ。
「さあね。気づいてるみたいだけど、今の私たちの会話はすでにSNSにあげさせてもらったから」
「ありがとう」
「随分と余裕ね。見ものだわ、あんたが誹謗中傷にどれだけ耐えられるのか」
私は欲深く弱い人間だ。
咲良よりもきっと誰よりも。
だからいつだって何度でも間違える。
目先のキラキラ輝く偽物の宝石に目を奪われて、本当に大切な石ころには目もくれず、気づけば全て失っている。
「ねぇ、川本さん。桜の花言葉知ってる?」
「は? どうしたの急に?」
川本さんが訝しげな顔を見ながら私は桜を指差した。
「フランス語で、私を忘れないで」
私の言葉に川本さんが奥歯を噛み締めたのがわかった。
「咲良が……ここで死んだ意味が分かったわ。じゃあね」
そう言うと川本さんは私を残して歩いていく。
一人きりになった私は桜の木の根元に残されたクマのキャラクターが描かれた缶を手にとった。
そしてそっとひと撫でしてから、再び桜を見上げる。
「私を忘れないで、か……」
いつだったかフランス文学にも詳しかった咲良が私に教えてくれた。
月夜に照らされて、ひらりひらりと舞い降りてくる桜の花びらはまるで涙みたいだ。
「さあね。気づいてるみたいだけど、今の私たちの会話はすでにSNSにあげさせてもらったから」
「ありがとう」
「随分と余裕ね。見ものだわ、あんたが誹謗中傷にどれだけ耐えられるのか」
私は欲深く弱い人間だ。
咲良よりもきっと誰よりも。
だからいつだって何度でも間違える。
目先のキラキラ輝く偽物の宝石に目を奪われて、本当に大切な石ころには目もくれず、気づけば全て失っている。
「ねぇ、川本さん。桜の花言葉知ってる?」
「は? どうしたの急に?」
川本さんが訝しげな顔を見ながら私は桜を指差した。
「フランス語で、私を忘れないで」
私の言葉に川本さんが奥歯を噛み締めたのがわかった。
「咲良が……ここで死んだ意味が分かったわ。じゃあね」
そう言うと川本さんは私を残して歩いていく。
一人きりになった私は桜の木の根元に残されたクマのキャラクターが描かれた缶を手にとった。
そしてそっとひと撫でしてから、再び桜を見上げる。
「私を忘れないで、か……」
いつだったかフランス文学にも詳しかった咲良が私に教えてくれた。



