花明かりのタイムカプセル

「何それ。頭おかしいんじゃない?!」

「ううん。本心だよ。咲良が死んでから、ずっと私も死んでたから」
 

咲良はただの一度も私の言うことに反論しなかった。ただいつも俯いて口を閉ざしていた。繊細で優しく、内向的で争いを嫌う咲良で本当に良かったと心から安堵した。


それと同時に自分の醜さに反吐が出そうだった。どうすれば良かったのか今だにわからない。

お金が必要だった。
美大に行きたかった。
受賞して大学から援助を受けたかった。
母の入院費用が必要だった。

ただただ、自分のために一生懸命だった。

もう一度人生をやり直せるとしても、やはり私は同じことをするのだろう。

人間は死んでも変わらない、これは私の持論だ。


「最後に……川本さんと咲良はどういう関係か聞いてもいい?」

あの咲良がこうして全てを話している相手がいるなんて思いもよらなかった。

「姉妹みたいなものよ」

「それは親友だったってこと?」 

「……」

「そんなに仲がいいなんて知らなかった、学校ではしゃべってるとこ見たことなかったし」

「色々事情があるの」

「そうなんだ」

川本さんと咲良がなぜ親しい友人であるのにそのことを周囲に黙っていたのか、咲良が川本さんに私のことを話したにも関わらず、川本さんが今日まで黙っていたのか何もわからない。

でも咲良が死んでいるいま、そんなことは些細なことであり、どうでもいい。

どんなに悔いても願っても時は戻らない。 
過去だけは変えられない。