桜の雨 (ALTO RE・COD)

「アルトから聞いたよ。伊勢物語の返歌」

「難しい和歌ですよね」

「ではなくて。かおる、君は泣いたそうだね。レポートにも、ちゃんと書くように。アルトの感情に関係あることは」

「はい」

「で、散る桜も見にいくとか。雨の日はダメだから」

「天気予報では4日後あたり、風が強いとか」

「そう。とりあえず、いつでもタブレットを持ち出せるようにしておくよ」

Dr.北斗はわたしにアルトの育成に関することは、ほぼ何でも許してくれる。

でも端末には触らせてくれない。

「端末の操作はしないで。機密事項もあるから、ちょっとした操作ミスも影響してくるからさ」

アルトの育成を初めて依頼された時、厳しい表情でそう言われた。

AI育成、しかも感情を持つAI。

デリケートな部分で、バグが起きるのを心配しているのだろう。