「因みに“B2”のメンバーの半数もここの生徒だよ」
「半数って?」
「大体50くらいかな」
「それって半数以上じゃん…」
確か何かで見た南城の全校生徒は750人弱。
“朱雀”が100で“B2”が50だとすると生徒の1/5が不良と言うことになる。
東都一の進学校って聞いてたけどとんだパチもんだな。
「大丈夫ですよ海さん!いくらここが“朱雀”のシマでも彼等が“B2”を敵に回すことはありませんから!」
そんなこと心配してねぇよ、と言いたいところだが自信満々で断言する伊月に違和感を覚えて理由を聞いてみると。
「だって“朱雀”は“B2”の傘下ですから!」
「……は?」
それは“朱雀”が“B2”の庇護下にあることを意味していた。
“B2”が東日本の三大勢力と格付けされているのは知っているが、元々暴走族や愚連隊に興味がなかったあたしは“B2”に入った今でもそっちの事情には疎かった。それを改善する気になれないのはあたしの性格上の問題か、それともあの男に対する反抗心故か。まあ、どちらでもいいか。
「他にも傘下には“蜘蛛”や“百足”もいるんですよ」
「ふーん…」
伊月の言葉に内心驚くも実感が沸かなかった。
多分それはあたしが“B2”に入ってから未だに傘下とやらとの顔合わせが一度もないからだ。どうでもいいけど。
「“朱雀”にとって“B2”はピラミッドの頂点だもん。そりゃ下手に手出せないでしょう」
「祈織くんは“B2”に憧れてるって言ってましたからね」
「“B2”じゃなくてサクちゃんにでしょう」
憧れ、ね…。
『日下部さんのところのお嬢さん、また賞を取ったそうよ』
『本当に優秀よね。うちの子にも見習って欲しいわ』
『おまけに美人で器量良しだからご両親も鼻が高いわよね』
『確か名前は…』
『あら、あの子じゃない?』
『違うわよ。あの子は2番目の…』
窓に手を付いてぼんやりと空を見上げる。
でも鉛色の空から降り続く雨は未だに止むことはなかった。
嫌なことを思い出した。
忘れたくても忘れられない過去の記憶。
何で雨の日っていつもこうなんだろう。最悪。
「海ちゃん、どうしたの?」
すると上の空のあたしを心配した桃が下から覗き込む。
「具合悪いの?」
「大丈夫。少し疲れただけだから」
こう言う時だけ小悪魔が天使に見える。
彼を安心させるために自分より少し背の高い桃の頭を撫でた。
「……顔色、悪いね」
「そう?」
「もうっ、夜遊びばっかしてるからだよ!次からはちゃんと僕も誘ってね!」
もうやるなって言わないところが桃らしい。
「はいはい」
「はいは1回!」
「はーい」
「喧嘩も程々にして下さいね。冠葉さんが心配しますから」
「またアイツかよ…」
伊月の口から嫌な名前が出て来たので態とらしく両手で耳を塞いで聞きたくないアピールをする。
すると次の瞬間、ドカッと背中に感じる重みに眉を顰めた。
あたしに抱き付く物好きは限られている。
桃と瀬戸、そして…。
「……尚哉、重い」
赤みがかった茶髪が視界の端に見える。
本人曰く天パではないらしいが、親しみやすい毛色と柔らかい癖っ毛が親戚の家で飼われているゴールデンレトリバーを思い出させる。
でもこの男は正真正銘の人間だ。残念だが犬ではない。しかもあたし達と同じ“B2”の幹部でもあった。
「よく分かったじゃん」
1ヶ月ぶりの再会だと言うのに相変わらずのアホ面であたしを迎えたのは“B2”の幹部で諜報部隊副隊長の風鳴尚哉だった。
何で1ヶ月ぶりかって?
そりゃ、ね…。
「停学明けおめでと」
「……どうも」
あたしはある理由から暴力沙汰を起こし1ヶ月の停学処分を言い渡された。
南城は東都の中でも有名な進学校だが、争い事がない平穏な学校と言うわけではない。
大抵の暴力事件なら学校側も見て見ぬ振りするような所謂放任主義の学校なのだが…。

