慣れない校舎の中を桃が案内してくれると言ったので、あたしは大人しく桃と伊月の後をついて行くことにした。
「で、何で南城にいること隠してたわけ?」
「別に隠してないよ。言いそびれちゃっただけだもん」
……白々しい。
「それに知ってると思ったんですよ。ここの生徒の殆どの不良は“B2”か“朱雀”に入ってますから」
「……は?」
殆どの不良が“B2”か“朱雀”に入ってる?
てか、“朱雀”って何?
「その様子だと知らなかったみたいですね」
「海ちゃんはそう言うの興味ないもんね!そう言うところが可愛いんだけど!」
「……目、大丈夫?」
「両目とも2.0だよ!」
そう言うことじゃねぇよ。
「でも流石に“朱雀”のことは知ってますよね?」
「知らない」
「………知ってますよね?」
「だから知らねぇって」
ここで強がっても仕方ないと思い本当のことを言ったのに、伊月は予想外のあたしの返答に目を見開きながら驚愕の色を浮かべた顔をグッと近付けた。
「すっ、“朱雀”ですよ?東日本の“四神”の一角であるあの“朱雀”のことですよ!?」
「くどい。知らねぇって言ってんだろうが。何度も同じこと言わせんな」
「だって海さん副隊長なのに知らないから…」
「あ?」
「じょ、冗談です!!」
「あははっ、海ちゃんらしいね!かーわい♡」
アンタの方が数倍可愛いわ!
そして一々抱き付くな!うざったい!
「と言うことは“四神”についても…」
「初耳だけど。それが何?」
「聞いたことないのは海さんだけですよ」
「あ?」
「ヒェッ!!い、いや、そそその…、“四神”って言うのは東日本の三大勢力と呼ばれる“百鬼夜行”“八咫鴉”“B2”に匹敵する四つのチームの総称みたいなものです!!」
「四つのチーム?」
「北の“玄武”・東の“青龍”・西の“白虎”、南の“朱雀”。その四つのチームの総称が“四神”って言うの。正式には“四神獣連合”って言うんだけどね」
「“四神”はその学校の生徒を中心とした不良から成り立っているチームで各学校の守護神的立場にあります。“朱雀”の拠点はここ南城なので南城の生徒達は代々の“朱雀”に守られて来たんです」
「ほら、海ちゃんの校章にも付いてるでしょう?」
桃に言われて制服のブレザーに付いている校章を見ると、金色で縁取られた円の中に赤い炎に包まれた鳥が描かれていた。
「それが“朱雀”だよ」
「元々朱雀と言うのは南方を守護する中国の伝説上の神獣なんです。翼を広げた鳳凰のような鳥形で表されることが多くて、イメージカラーは赤色。神話とかに登場する不死鳥やフェニックスと同一視されているみたいです」
「……難しい話されても分からないんだけど」
「要するに鳥形と赤が“朱雀”のイメージなの。制服も赤がベースでしょう」
桃の言う通り、南城の制服は赤を基調としたものだ。
柘榴色のブレザーに白と黒のチェック柄が入ったズボンとスカート。そして赤銅色のネクタイと大きなリボン。一目でどこの高校か分かりそうな派手な色合いにやっぱりここにすべきじゃなかったと改めて後悔した。
「この校章は南城の生徒であり“朱雀”である証なんです」
「ふーん…。じゃあここの生徒だったら誰でも“朱雀”に入れるってわけ?」
「原則はそうなんだろうけどその代の総長にも寄るかな。戦力にならない人を入れても意味ないし、寧ろ足手纏いだし」
「数は?」
「大体100くらい」
「100!?」
え、そんなに多いの?
たかが不良チームなのに?

