紅い蝶の見る夢




「そういや喉渇いてたの忘れてた…」



さも今思い出したかのように話を変える、緋真。



「ツッキーから電話掛かって来てそれどころじゃなかったもんね」

「約2名はな」

「………えっ?」

「ん?」



2名(アゲハさんと駿河)はさも自分には関係ないみたいな顔をして呆けていたが、そろそろ自覚した方がいい。
姫信者とまで言われているのにこれで気付かなかったら相当だ。



「何かコーラが飲みてぇ気分だわ〜」

「コーラばっか飲んでると歯が溶けちゃうよ」

「えっ、それ本当ですか!?」

「うん、ゴンザレスが言ってた」



ゴンザレス…?



「じゃあ間違いないですね!」

「………凄いな(色んな意味で)」

「え、何がですか?」

「いや、何でもない」

「ゴンザレスでもジェイソンでも何でもいいけど今はコーラの気分なんだよ、コーラ」

「炭酸水にコカを混ぜたらコーラになるんじゃないですか」

「あ、その手があったね!早速ゴンザレスに言って調達してもらおうか?」

「サラッと怖ぇこと言ってんじゃねぇよ!オメー等が言うとマジでシャレになんねぇんだよ!」

「コーラの気分を削がそうかと」

「笑えねぇよ…」

「僕は冗談じゃなかったんだけどな〜」

「(だからマジでシャレになんねぇって…)あ、そうだ。海に頼んで買って来させるか」



その言葉に素早く反応したのは桃だった。



「ちょっとヒーくん、海ちゃんをパシるつもり?パシ…、お遣いを頼むならすーちゃんに頼めばいいじゃん、いつもはそうしてるくせに」

「いいじゃねぇかよ、偶々外出てんだからついでにさ」

「……サクちゃん」

「俺も行こう」

「それはそれで面倒臭ぇからオメーは引っ込んでろよ」

「海を連れ戻すついでだ」

「えっ、じゃあ僕が行くよ!僕も海ちゃんを捜す!」

「だから行かなくていいって。てかコーラが飲みたいだけであって海捜しがメインじゃねぇからな」

「は?」

「何言ってんの?海ちゃん捜しがメインに決まってんじゃん」

「だからそう言う時だけ結託すんな腹黒コンビ。オメー等に頼むと真っ直ぐ帰って来ない気がするからそもそも選択肢に入れてねぇんだよ」

「じゃあやっぱりすーちゃんがパシ…、だね」

「あ、僕ならいいで…」

「駿河も却下。コイツにはいつもパシ…、頼んでるから偶には楽させてやりてぇの」

「じゃあ蛹の誰かをパシれば?」

「……あの、無視しないで?」

「蛹でもいいけどよ、海が外出てんだから海に頼んだ方が手っ取り早いだろうが」

「僕、買い物行くよ?」

「手っ取り早くてもダーメ。海ちゃんに頼むなんて100億年早いよ」

「そこまでかよ」

「海ちゃんに頼むならすーちゃんをパシって。若しくは尚哉」

「……うん、もうパシリでいいよ」

「「あ、認めた」」



……駿河、不憫だ。



「そう言えば先程から尚哉の姿が見えないようだが…」

「えっ!?」

「そう言えばさっきからいないね。トイレじゃないの?」

「チッ、あの野郎パシられると思って逃げやがったな」

「パシリが嫌で逃げ出したならいいですけどね…」



頼稀の言葉に違和感を覚えた。



「どう言うことだ?」

「そのまんまの意味ですよ。パシリが嫌で逃げ出したならそれでいいんです。でももし違う理由で姿を消したなら…」

「消したなら?」

「………面倒臭い」

「何々?何が面倒臭いの?尚哉のことなんて放って置けばいいじゃん」

「……成程。そう言う理由なら後々面倒なことになりそうだね、特に冠葉と桃が」

「俺が、ですか?」

「僕も?何で?」

「……あ、俺分かった」

「ぼ、僕も…」



俺と桃に関係すること?

且つ後々面倒なことになるとしたら…。



ふと脳裏に過ぎったのは艶のある長い黒髪を靡かせる彼女の姿だった。



「……まさか」