Prrr…
不意にコール音が鳴り響く。
その音の出所を突き止めるために視線を泳がせていると。
「……アゲハさん」
「ん?僕かい?」
どこの熟年夫婦だよ、と思わずツッコミを入れそうな会話に口元を抑える。
総長はスマートフォンの液晶画面を確認した直後、物凄い勢いで通話口を耳に当てた。
始めは上機嫌な口振りで話していた総長だけど次第に声のトーンが下がっていき、電話が終わる頃には先程までのテンションはどこへ行ったのやらズシーンと効果音が聞こえるんじゃないかってくらい全身真っ白になって項垂れていた。
面白い……じゃなくて、総長をここまで落胆させられるのはきっと世界中捜してもあの人しかいないだろう。
「あーちゃん、電話誰からだったの?」
「どう考えても1人しかいないだろう」
「天羽がぁ〜、僕のマイエンジェルがぁ〜」
やっぱり面白い。
「姫さん今日も来れないんですね、残念」
「……アンタ、思ってないでしょう?」
「失礼な。残念だと思ってるよ、……ほんの少しだけ」
「それを思ってないって言うんだよ」
「あの人等みたいな信者と一緒にされたくないんだよ」
「確認だけど、その複数形に俺は入ってないよな?」
「不知火さんはね。でも…」
あたし達は尚哉が顎で示した先にあるものを見て納得した。
「え、姫様来れないんですか?」
「ああ、残念だがあの子も忙しいようだ」
「そう、ですか…」
しゅんと捨てられた子犬のように項垂れる、総長と伊月。
あからさま過ぎてウケるんだけど。
姫こと九條院天羽は我らが総長の妹であり“B2”の副長だ。
今年から高校に進学した姫は全寮制学校に通うことになり以前のように頻繁に倉庫に顔を出すことが出来なくなった。何でも生徒会みたいなものに入ったらしく毎日忙しいと愚痴を零していたのを思い出す。
「海もあの子がいなくて心細いだろう。たった2人の女の子だからね」
「えっ、あー………うん」
流石に兄貴の前で「別に…」とは言えなかった。
「じゃあ今日のあれは中止と言うことでいいんですね」
「あれ?」
風魔の言葉に首を傾げた。
「暁羽さんがお前の復帰祝いをやろうと言ってくれたんだ」
「復帰祝い?」
「海の謹慎が明けたお祝いさ。それにここに顔を出すのも久しぶりじゃないか。折角だからメンバー全員揃ってやろうと思ったんだが…。あの子が来れないとなるとまた別の日を選定しないといけないね」
「まあ、あずにゃんもいつ帰って来るか分からないしね〜」
「姫様もいませんし…」
この信者め。

