紅い蝶の見る夢




「てか、何で瀬戸がここにいるの?学年違うくせに」

「ナンパ?アンタって熟女好きなんじゃないの?」

「熟女好きじゃなくて年上キラーと呼びなさい。それに語弊を生むような言い方もやめてくんない?俺は遊び人じゃなくて博愛主義なだけ。俺のビッチちゃんが勘違いすんでしょうが」

「色々とツッコミどころ満載だけど、いつ誰がお前のになったんだよ?」

「海は俺のだ」

「お前のでもねぇよ!」



そんな幼稚なやり取りにヒロが後ろで苦笑する。



「梓さんは日下部さんに会いに来られたんッスよ」

「あたしに?何で?」

「そりゃあビッチちゃんがちゃんと登校してるのかこの目で確かめるためだよ。ビッチちゃんってちょっと目を離すとすぐ他の男引っ掛けてんだもん。本当油断も隙もないんだから」

「あたしがいつ男引っ掛けたんだよ。寝言は寝て言えボケ」

「自覚がないのか、それとも惚けてんのか…。ビッチちゃんが倉庫に顔出さなかった間本当大変だったんだよ」

「桃と尚哉が喧しかったって話しならもう聞いた」

「大変だったのはその後だよ。桃と尚哉の口喧嘩に当然のように巻き込まれて、その上冠葉の無言の圧に耐えかねた駿河がストレスから胃腸炎で寝込んじゃってさ。おまけに円形脱毛症にまでなりかけたから流石の桃と冠葉も反省してたよ」



うわぁ、可哀想。
そう言うキャラだから仕方ないとは思ってたけど、流石にそこまでいくと不憫に思えてならない。ご愁傷様。



「反省してないのはそこの1匹だけ」

「尚哉…」

「俺しーらね」

「あたしが言うのも何だけどもう少し伊月への態度を改めたら?ああ見えても一応年上だし」

「本当、海には言われたくないわ」



♬〜



突如、某アニメのテーマソングが教室内に鳴り響く。

これは電話か?



「……何、この音?」

「あ、俺だ」



瀬戸はズボンのポケットからスマートフォンを取り出して耳に当てる。
やっぱり電話だったか。瀬戸が電話しているところをよく見かけるので何となくそう思った。それこそ倉庫や喧嘩の最中も平気で電話に出ている。瀬戸が誰と頻繁に連絡を取っていようとあたしには関係ないことだが、通話口から聞こえる甲高い女の声と何度も腕時計を確認するその姿にまたかと呆れ返る。
ただ先程までとは違い声のトーンが少し低くなったのはどう言うわけなんだろうか。



「13時か…」



ボソッと、電話を終えた瀬戸が言葉を漏らす。



「梓さん、何か用事ッスか?」

「どうせまた女だろう」

「まあね。今回の子はちょっとお嬢様気質だから我儘で困っちゃうよ」

「聞いてねぇし」

「あれ、ビッチちゃんヤキモチ〜?」



ふっふふ、まさか。



「死にたい?」

「安心して。俺はビッチちゃんのこと()愛してるよ」

「死ね」

「またまた〜、俺が死んだら悲しいくせに恥ずかしがっちゃって」

「全く持って悲しくないし恥ずかしくもねぇよ」



寧ろ世界平和に繋がる気がするのはあたしだけだろうか。



「で、でも、何で着信音がア○パンマンなんですか?」

「センスないよ」

「今の子ちょっと似てるんだよね」

「……ア○パンマンに?」



それ悪口じゃん。
ア○パンマンに似てるってどんな顔だよ。いや、顔とは限らないか。
性格が似てるとか?自分の命削ってでも他人を助ける慈悲深い女神みたいな子なのかもしれない。



「……アンタ、女選ぶ時どう言う基準で選んでるわけ?」

「え、勿論顔だよ」

「顔なのっ!?性格じゃなくて!?」

「そりゃあそうでしょう。人間誰しも第一印象でほぼほぼ決まるからね。顔6割、身体の相性4割だよ」

「ゲスいことは聞いてねぇよ」

「それでア○パンマン選んだのかよ。意味不明」

「ま、まあ…、好みは人それぞれッスから…」



必死に言葉を探すヒロには悪いが全然フォロー出来てないから。
どちらにしても瀬戸の趣味が悪いことには変わりない。



「で、今ので何人目?」

「9人目」



さも当たり前のように言い切る瀬戸に溜息しか出ない。
瀬戸は女関係にスーパーだらしがないチャラ男だ。チャラ男の中のチャラ男、最早クズと言っても過言ではない。しかも9股しといて常に彼女募集中のクレイジー。理解出来ない。
でももっと理解出来ないのは自分以外に彼女がいると分かっていても付き合ってる彼女達の方だ。どいつもコイツもイカれてる。目の前にいたらそう言ってやりたいくらいだ。いや、絶対に言ってやる。