紅い蝶の見る夢




それから恋ちゃんは南城について教えてくれた。



「もう聞いたかもしれないが南城は東都一の進学校だ。そのくせ不良と、何より同性愛者が多い」

「ふーん…」










………ん?





んんっ!?



「と言うより外の世界と比べるとホモやレズへの偏見がないんだよ」

「ホモ、レズ…」



つまりあれか。
男が男を好きになったり、女が女を好きになったりする…。



「まあ、無理に理解しろとは言わないが、学校の風習だと思っていてくれ」

「……偏見はないよ」



理解も出来ないけど。



「ははっ、正直な奴だな」

「嘘が吐けないだけ」



でもこれで分かった。
何であの人がアイツを選んだのか。



(所謂南城病ってわけね…)



義務教育は終わったって言うのに余計なもんまで教えてんじゃねぇよ。



「それと“朱雀”のことは聞いたか?」

「南城の不良グループでしょう、……“四神”だっけ?」

「そうだ。ここの不良の大半は“朱雀”が占めているからな」

「それも凄いよね、ここって進学校なのに」

「でも昔から進学校だったわけじゃないぞ」

「そうなの?」

「ああ、昔はそれなりに名の通った不良校だったからな」



それが今や東都一有名な進学校とまで名を轟かせるとは一体どんな手を使ったことやら。



「純粋な疑問なんだけど、折角不良校から東都一の進学校とまで言われるようになったのに何で今も“朱雀”なんか飼ってるの?」

「“朱雀”が結成された時、初代総長様が南城の学生だったんだよ。それで必然的にここが“朱雀”の本拠地みたいになったってわけ。それと…」



不意に恋ちゃんの手があたしの方に伸びる。



「“B2”と、その追っ駆けも多い」

「………」



恋ちゃんのゴツゴツした太い指があたしの左耳に触れる。
そこには毒々しいほど紅い一羽の蝶が止まっていた。
雨のせいで一つに束ねた左耳には嫌でも目立ってしまう。



そう、これが“B2”の証。



「紅ってことは…、特攻か?」



“B2”の証である蝶のピアスは色や形でその者の地位と部隊を表していた。



総長は黒色。

副総長は白色。



その他の幹部は大きく分けて4色ある。



総長・副総長の護衛に当たる親衛部隊は黄色。

突発の事態にすぐさま対応する遊撃部隊は青色。

あらゆる情報を入手し管理する諜報部隊は緑色。

そしてあたしが副隊長を務める特攻部隊は部隊の最前線に立ち敵に突っ込んでいく部隊で、紅色のピアスを付けている。



また形にも違いがあり、幹部以上の者の蝶は翼を大きく広げ羽ばたいているが、それ以外の者の蝶は羽を休めているようなデザインになっている。
そして隊長以上の者は右耳に、それ以外の者は左耳にのみ付けることを許されている。
“B2”にとってこの蝶のピアスは正にエンブレムのようなものだった。



「……知ってたの?」

「海が“B2”の幹部だってことか?そりゃ知らないわけないだろう。あんだけ入学式で派手に暴れたら嫌でも噂は広まるさ。海の正体が“B2”の幹部で特攻部隊副隊長の紅蝶だってことはな」

「別に隠してるつもりはなかったんだけど」

「いや、そこは隠そうぜ…」



“B2”に入ったのは予定外だった。
暴走族なんて興味なかったし、仲間とか……よく分からない。



でも仕方なかったんだ。

あの時のあたしにはそれ以外の選択肢がなかったから…。