「とりあえず謹慎が解けて良かったな」
「……うん」
「何だ、嬉しくないのか?」
「そうじゃないけど…」
「でも浮かない顔してるぞ。折角姉妹揃ったって言うのに」
「…………」
謹慎が解けて晴れて自由の身になったことは嬉しい。
でもあの人と同じ学校に通うのはやっぱり気が引ける。素直に喜べない。寧ろ全然嬉しくなかった。
「あっ、あー……悪い。余計なこと言った。俺が口出していいことじゃなかったな…」
「いいよ、本当のことだし」
あたしの沈黙の意味を正確に理解した恋ちゃんはそれ以上追及しなかった。
うちの事情を理解している恋ちゃんだからこそこう言う雰囲気には敏感だから正直助かる。だから兄みたいな存在なんだよな、頼もしい。
「あたしの方こそ入学式の時はごめんね。まさか恋ちゃんが理事長だと思わなかったから…」
「知ってたら喧嘩しなかったか?」
「生憎師匠には“売られた喧嘩は高価買取”って教わったんだよね」
「ふはっ、違いねぇ」
ただ今回に限っては都雲ちゃんの教えがあってもなくても無視することは出来なかった。
あの言葉を聞いてしまったから。
『―――おい見ろよ、あの黒髪の女』
『アイツが例の副隊長か…』
『しかもあの山本さんの知り合いらしいぜ』
『マジで!?』
『うわぁ、ショックだ』
『案外山本さんもあの女みたいに裏で相当ヤバいことしてんじゃねぇの?』
『有り得る。山本さんの私生活って謎だし一緒にいる男もしょっちゅう変わってるしな』
『あの女みたいに族の頭に媚び売って足開いてたりしてな』
『なら俺達にもワンチャンあんじゃね?』
『ギャハハ、今度誘ってみるか!』
その言葉であたしはキレた。
その後のことはよく覚えていない。
目の前が真っ白になって、自分が何をしたのかもよく分からなかった。
気付けば数人の男達があたしの周りで倒れていた。後に残ったのは周囲の悲鳴と血塗れの制服だけ。
「だからってあれはやり過ぎだぞ。リアル血の海なんて何年ぶりだよ。やるなとは言わねぇが時と場所を考えろ。大変だったんだからな、教育委員会やPTAのババア共を黙らせんの」
「以後気を付けます」
「……言えばいいと思ってないか?」
「まさか」
恋ちゃんが言いたいことは分かる。分かっているつもりだ。
でも、ごめんね。
誰であろうともあの人を侮辱する人間をあたしは許せないんだ。

