イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

待合室には、消毒の匂いと、遠くで聞こえるナースコールの音だけが漂っていた。

神谷は深く腰掛け、胸の前で両手を組んでいた。
目を閉じるでもなく、どこか宙を見るような視線を落としている。

そこへ、白衣の医師が静かに近づいてきた。

「橋口美香奈さんの容体ですが――
命に別状はありません。喉に圧迫の痕がありましたが、呼吸は安定しています。
念のためしばらく点滴を続け、精神的なショックにも配慮した対応をとります」

神谷はわずかに頭を下げた。

「ありがとうございます」

「いまは安静を保ってもらっています。少し眠っていますので、
ご面会は様子を見ながら判断しましょう」

医師はそう告げて立ち去っていく。

神谷は、短く深呼吸をひとつした。

彼女が無事だったことに安堵した自分と、
現場に立つ者としての自分が、心のなかで折り重なっていた。

そのとき、ポケットの中でスマートフォンが震える。

画面には、交番の同僚の名が表示されていた。

「……神谷さん。刑事課が現場に入りました。
非常階段の扉周辺に痕跡があったらしく、現場鑑識も動いてます。
今後の対応、正式に刑事課と連携ってことになりそうです」

「了解」

受け答えは短かったが、その言葉の奥にあるものは重かった。

(事件は、これから本格的に動き出す)

ただ彼女を守るだけでは終われない。
この先、どこまで踏み込んで関わっていくべきなのか――

警察官としての自分が試される。

同時に、あの震える手を握った夜の記憶が、神谷の胸に静かに残り続けていた。