救急車が病院のエントランスに到着すると、玄関先にはすでに受け入れの看護師たちが待機していた。
ドアが開かれ、担架がゆっくりと車外へ押し出される。
神谷は、最後まで美香奈の手を握っていた。
だが、担架を担当するスタッフがやさしい声で言った。
「ここから診察に入りますので、お預けいただいて大丈夫です」
神谷はわずかに息を止めたのち、静かに手を解いた。
美香奈は目を閉じたまま、担架の揺れに反応するように、ほんのわずかに眉を寄せていた。
その背中が扉の向こうに消えていくまで、神谷は一歩も動かず、視線を離さなかった。
病院のスタッフに案内され、神谷は待合室へ通された。
椅子に腰を下ろすと、手にはまだ、
透明なビニール袋に入れた黒いフラットシューズが握られていた。
履きなれたその靴は、今日一日の証のようにも思えた。
目を伏せると、彼女の震える指先や、胸に寄せられたあの温もりが記憶の中で蘇る。
(……本当に守れたのか)
答えの出ない問いが、心の奥に静かに沈んでいく。
そのとき、看護師がそっと近づいてきた。
「橋口さんの靴、お預かりしますね。病室でご本人にお渡しします」
神谷は無言で頷き、袋を差し出す。
看護師が丁寧にそれを受け取り、一礼して去っていった。
手元から靴が離れた瞬間、
ようやく、わずかに現実の一端が戻ってきた気がした。
ドアが開かれ、担架がゆっくりと車外へ押し出される。
神谷は、最後まで美香奈の手を握っていた。
だが、担架を担当するスタッフがやさしい声で言った。
「ここから診察に入りますので、お預けいただいて大丈夫です」
神谷はわずかに息を止めたのち、静かに手を解いた。
美香奈は目を閉じたまま、担架の揺れに反応するように、ほんのわずかに眉を寄せていた。
その背中が扉の向こうに消えていくまで、神谷は一歩も動かず、視線を離さなかった。
病院のスタッフに案内され、神谷は待合室へ通された。
椅子に腰を下ろすと、手にはまだ、
透明なビニール袋に入れた黒いフラットシューズが握られていた。
履きなれたその靴は、今日一日の証のようにも思えた。
目を伏せると、彼女の震える指先や、胸に寄せられたあの温もりが記憶の中で蘇る。
(……本当に守れたのか)
答えの出ない問いが、心の奥に静かに沈んでいく。
そのとき、看護師がそっと近づいてきた。
「橋口さんの靴、お預かりしますね。病室でご本人にお渡しします」
神谷は無言で頷き、袋を差し出す。
看護師が丁寧にそれを受け取り、一礼して去っていった。
手元から靴が離れた瞬間、
ようやく、わずかに現実の一端が戻ってきた気がした。



