イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

サイレンの音が遠ざかる住宅街の夜を切り裂き、救急車が静かに走り出した。

車内は、エンジン音と機材のわずかな振動が響く以外、驚くほど静かだった。

美香奈は担架の上に横たわったまま、微かに震えていた。

目は閉じたまま、呼吸は浅い。
それでも先ほどよりは安定していたが、呼びかけに応じることは難しい状態だった。

神谷は彼女のすぐ隣の簡易シートに座り、黙ってその様子を見つめていた。

搬送用のブランケットの隙間から出ている彼女の手が、かすかに動いた。

神谷はそれに気づき、そっとその手を包み込む。

冷えていた手が、ほんの少しだけぬくもりを取り戻しはじめていた。

彼女が反応を返したわけではなかった。
けれど、その指先の小さな動きは、確かに「そこに誰かがいる」ことを求めていたように思えた。

神谷は言葉を発さず、ただその手を優しく握り直した。

心の中では、いくつもの言葉が渦巻いていた。
「遅かった」「守れなかった」「もう二度と」と。

けれど、それらを言葉にするには、まだ早すぎた。

だから今は、ただこうしている。
彼女が少しでも安堵できるように。
心音が、手のぬくもりが、ひとつの“居場所”になるように。

車体が緩やかに右折し、夜の灯が窓を流れていった。