イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

救急隊員の手によって、慎重に担架が準備される。
毛布をかけたまま、美香奈は静かにそこへ移されていく。

けれど――

移動の動きに反応するように、また呼吸が不安定になった。

「……っ、……うっ……」

小さく荒い音が漏れる。
それに呼応するように、両肩が再び震え出した。

救急隊員はすぐにそれを察知し、顔を近づけて声をかける。

「大丈夫ですよ。ゆっくり呼吸しましょうね。……焦らなくていいですよ。
今から救急車へ移動します。揺れますけど、すぐに落ち着きますからね。」

繰り返す言葉のリズムが、鼓膜にやさしく響く。
隊員の手は肩の上にそっと添えられ、一定の圧で安心を伝えていた。

そのあいだに、もう一人の隊員が神谷に向かって言う。

「すみません。玄関にある靴、お持ちいただけますか?
病院で必要になるので、持っていただけると助かります」

神谷は頷き、無言で靴棚に向かう。
並んだ数足の中から、できるだけヒールの低い履きやすそうな靴を一足選び取り、そっと手に持って戻ってきた。

そのとき、担架の脇にいた隊員が神谷を一瞥してから、美香奈のそばに身を寄せた。

「このあと、神谷さんという方が救急車に一緒に乗ります。
言葉が難しければ、問題なければ手を握ってもらえますか?」

美香奈の目元がかすかに動く。

隊員がやさしく、自分の手を差し出した。

しばらくの沈黙ののち――
美香奈の指先が、隊員の手をゆっくりと握った。

力は弱くとも、確かな意志が伝わる。

「わかりました。では、同行お願いします」

神谷は再び頷いた。
そのまま、無言で美香奈の隣へと立つ。

彼女の靴をしっかりと握った手には、言葉の代わりに“守る覚悟”が込められていた。神谷はすぐ隣で、そのやり取りを無言で見守っていた。