イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

その叫びに、男の動きが一瞬、荒ぶる。

「……うるせぇって言ってんだろ!」

次の瞬間、手が美香奈の喉元を締めつけた。

(くるしい――)

声が出ない。
視界がにじみ、酸素が奪われていく。

(……助けて、誰か……)

それでも、美香奈は全力で暴れた。
膝を突き上げ、肘を振り、床を蹴る。

――ガシャン!

棚から落ちたコップが床で砕け、大きな音が室内に響いた。

その異様な物音が、壁の向こう側にまで届いた。

隣室の住人が、かすかな物音に気づいていた。
そっと玄関を開け、様子を窺い――
静かに、警察へ通報する。

誰にも気づかれないよう、震える手で番号を押し、
ひそやかに状況を伝えた。

そして――

遠くの方から、かすかなサイレンの音が近づいてくる。

ウーウー......ピーポーピーポー.....

その音に、男が一瞬ピクリと体を強張らせた。

「……くそっ」

乱暴に美香奈を突き放し、奥の部屋へと走る。
廊下の突き当たり――非常階段につながる扉を開けて、姿を消した。