ほどなくして、警察官が戻ってきた。
「内容は確認しました。ただ……やはり、現段階では“脅迫”や“予告”とまでは言い切れない内容でして。被害届の受理は難しいかと」
「でも、“また見に行く”って……これって脅しじゃないんですか?」
「捉え方としては理解できます。ただ、法的には“明確な害意”や“実害”がないと……」
“また、か”。
美香奈はうつむきながら、心の中でその言葉を繰り返した。
「……わかりました」
声に力はなかった。けれど、怒りではなく、諦めでもなく、ただ空っぽだった。
「巡回強化の対象として本署に伝えておきます。何か動きがあれば、すぐご連絡ください」
「……ありがとうございます」
言葉は交わされた。だが、心には何も届いてこなかった。
交番を出ようとしたときだった。
ふと視線を感じて、そちらを見る。
奥の机に座っている若い警察官。
無言のまま、視線だけがこちらに向けられていた。
整った顔立ち。冷たい印象の目。感情の読めない表情。
その人は、何も言わず、ただじっとこちらを見ていた。
――誰? 初めて見る人。
その目に、一瞬、何かの感情が宿った気がした。
けれどすぐに彼は視線を外し、書類に目を戻した。
交番の扉を閉めて、外の空気を吸う。
息が白く広がった。まだ、冬の名残が消えない空。
ポケットの中で、指がわずかに震えていた。
たった今見たあの警察官の目が、なぜか頭から離れなかった。
「内容は確認しました。ただ……やはり、現段階では“脅迫”や“予告”とまでは言い切れない内容でして。被害届の受理は難しいかと」
「でも、“また見に行く”って……これって脅しじゃないんですか?」
「捉え方としては理解できます。ただ、法的には“明確な害意”や“実害”がないと……」
“また、か”。
美香奈はうつむきながら、心の中でその言葉を繰り返した。
「……わかりました」
声に力はなかった。けれど、怒りではなく、諦めでもなく、ただ空っぽだった。
「巡回強化の対象として本署に伝えておきます。何か動きがあれば、すぐご連絡ください」
「……ありがとうございます」
言葉は交わされた。だが、心には何も届いてこなかった。
交番を出ようとしたときだった。
ふと視線を感じて、そちらを見る。
奥の机に座っている若い警察官。
無言のまま、視線だけがこちらに向けられていた。
整った顔立ち。冷たい印象の目。感情の読めない表情。
その人は、何も言わず、ただじっとこちらを見ていた。
――誰? 初めて見る人。
その目に、一瞬、何かの感情が宿った気がした。
けれどすぐに彼は視線を外し、書類に目を戻した。
交番の扉を閉めて、外の空気を吸う。
息が白く広がった。まだ、冬の名残が消えない空。
ポケットの中で、指がわずかに震えていた。
たった今見たあの警察官の目が、なぜか頭から離れなかった。



