イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

誰かが、わたしの生活に入り込んでいる。
足音もなく、声もなく。
でも、確実に。無言のまま、じわじわと。

美香奈は、手にした白い封筒をカバンの中に滑り込ませながら、交番へ向かっていた。
今度こそ――何かが変わる。
そんな期待をかけていたわけではない。

むしろ、“何も変わらない”ことを知っていて、それでも動かずにはいられなかった。

交番の中は、前回と変わらず静かだった。
土曜日の午後。街がのんびりとした空気に包まれる中、ガラス越しに見えたのは、前回と同じ年配の警察官だった。

「こんにちは」
美香奈が声をかけると、彼は顔を上げて軽く会釈をした。

「こんにちは。また、何か……?」

「はい。あの、これを見ていただきたくて」

そう言って差し出したのは、ポストに入っていた白い封筒。
の中の、たった一行のメッセージ。

また、見に行きます。

警察官はそれを手袋越しに受け取り、机の上でそっと開封する。
黙って数秒間、紙をじっと見つめたあと、小さく唸った。

「……なるほど。こういった文言ですね」

「差出人も、宛名もありません。ポストに入ってたんです。郵便ではなくて、直接」

「わかりました。少しお時間いただいてもよろしいですか?」

そう言って警察官が奥に引っ込む。
小さな交番の中には、時計の音だけがカチカチと響いていた。

壁に貼られた地域安全マップ、整然と並んだ交通安全ポスター、長椅子に座る自分。
そのすべてが、どこか他人のもののように思えた。