イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

交番を出て、帰り道を歩く。
さっきまで見えていた店の明かりが、背後で遠ざかっていく。

街灯の下を通るたび、自分の影が地面に長く伸びた。
歩く音。風に揺れる木の葉の音。何もかもが、やけに大きく聞こえる。

誰かが後ろを歩いているような錯覚が、何度も背中をぞわつかせた。
足を止めて振り返る。でも、そこには誰もいない。

 “気のせいだ”。そう自分に言い聞かせる。
でも、何度繰り返しても、その言葉は心に染み込まなかった。

アパートの鍵を開け、ドアを閉める。
チェーンをかけ、ダブルロックを確認し、外からの音を遮断するようにカーテンを引いた。

部屋の中は変わらず静かで、整っていた。
何も変わっていないはずなのに、何もかもが違って感じられる。

服を脱ぎ、シャワーを浴びようと浴室の扉を開けかけたところで、ふと、動きが止まった。

窓。
ちゃんと閉めたよね? 鍵もかけたよね?

確認して、やっぱり閉まっていた。それでも、不安が消えない。

部屋に戻り、スマホを手に取り、無意味にロック画面を何度も点けたり消したりした。
SNSを開く気にもなれない。誰かに連絡しようにも、話してどうなるというのだろう。

 “なにも起きてない”。 
 警察のあの言葉が、耳の奥で反響する。
 それでも。
 “起きるかもしれない”という感覚が、ずっと胸に張りついている。