イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした

「橋口さん、午前中のアポ、時間ずらせそうだって連絡きた。11時半でお願いできる?」

出勤して間もなく、真木弁護士からそう声がかかった。

「はい、大丈夫です。資料、今まとめていますので」

「助かるよ。最近、案件が立て込んでるからな」

そのやりとりは、いつも通りの仕事の風景。
でも、美香奈はどこかで“演じている”ような感覚を覚えていた。

(いつもと同じ……に見える。でも、私はまだ、昨日の延長にいる)

頭の片隅に、屋上の影が残っている。
“ただの業者”とわかっても、あの瞬間に感じたざわつきは、そう簡単に消えなかった。

真木は何かを察したように、美香奈の手元をちらりと見た。

「顔色は……まぁまぁか。無理しないようにな。何かあったら、俺にでも話してくれていい」

「……ありがとうございます」

その言葉に、美香奈は小さく微笑んだ。

心の中では、“その人”にも同じことを言ってもらえたら、とどこかで思っていた。